尖閣諸島の久場島沖の東シナ海で7日、中国の漁船と日本の巡視船が衝突し、石垣海上保安部が中国人船長を逮捕した事件で、領有権をめぐる対立を抱える日中双方が抗議し合っている。
東シナ海のガス田共同開発に向けた条約締結交渉が緒に就いたばかりであり、不要なあつれきを強めて関係がきしむのは日中両国にとって不利益にほかならない。摩擦を最小に抑える冷静な外交対応を望みたい。
まず、はっきりさせておくが、尖閣諸島は日本固有の領土である。明治政府が他国の支配が及んでいる痕跡がないことを確認した上で、1895年に領土に編入した。
東シナ海で石油資源埋蔵の可能性が浮上し、中国は92年に「釣魚島」として領土と明記した領海法を制定し、領有主張を強めてきた。
海上保安庁によると、中国漁船は日本領海内で操業していた。退去命令を出した巡視船に接触した上でさらに逃走を図り、停船命令にも応じずに別の巡視船にも接触している。
尖閣諸島近海に姿を見せる中国漁船は増えているが、乗組員逮捕に至るトラブルは極めてまれだ。2008年6月には日本の巡視船と接触した台湾の遊漁船が沈没する事故があったが、中国船との衝突事故は初めてとみられる。
漁船側の領海侵犯による違法操業が引き起こした異例の事態であり、外交のために国内法の厳正な執行を曲げず、粛々と対処したことは当然である。
海軍の艦船の動きを含め、日本の排他的経済水域(EEZ)にまで活動範囲を拡大している中国には、東シナ海の資源獲得を譲らないという思惑があることは間違いない。尖閣諸島は台湾も領有権を主張しており、近海では中国と台湾の漁船が頻繁に操業し、海上保安庁が退去を呼び掛けていた。
緊張を生みかねない要素はありながらも、日中は友好関係構築に向けた具体的な動きも見せている。08年6月に、東シナ海のガス田開発をめぐり、共同開発することで合意したことを受け、主権問題が絡む日中の境界線の確定を棚上げしつつ、7月末から条約締結交渉が本格化した。東シナ海での偶発的衝突防止に向けた防衛当局間の連絡体制の確立も協議している。
今回の事件が、日中両国の友好と協調を目指す動きを逆行させることにつながってはならない。
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