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尖閣沖接触事件 中国の自制を求めたい '10/9/10

 沖縄県・尖閣諸島近くの領海内で中国のトロール漁船が不法操業し、海上保安庁の巡視船に体当たりする事件が起きた。漁船の船長を公務執行妨害の疑いで逮捕。政府は中国に厳重抗議をした。

 歴史的に見ても尖閣諸島が日本の領土であることは明らかだ。不法漁船を取り締まり、毅然(きぜん)とした姿勢を示すのは当然といえる。

 事件は7日に発生した。領海外への退去を何回も警告された中国船が巡視船に接触して逃走。追いかけた別の巡視船に体当たりし、4時間後に停船命令に応じた。

 乗組員にけがはなかったが、人命にかかわる危険な行為だ。しかも2回もぶつかるなど、極めて悪質である。誰が指示し、どんな狙いで体当たりを繰り返したのか。徹底した解明が必要である。

 一帯はカワハギやアジなどの好漁場として知られる。このところ多くの中国船が操業し、日本の領海に入り込んで警告されるケースも後を絶たない。漁船の挑発的な行為は日本側の対応を瀬踏みしているのだろうか。

 船長の逮捕に踏み切ったのは翌8日。外交問題に発展する可能性があることから、政府が慎重に対応した結果であろう。時間がかかったのはやむを得まい。仙谷由人官房長官は「冷静に対処することが必要だ」と述べ、中国側と対応を協議する考えも示した。

 これに対し尖閣諸島の領有権を主張する中国は、日本の丹羽宇一郎大使を呼んで強く抗議し、船長をすぐに釈放するよう要求した。しかし、事件の全容を明らかにすることこそ、まず中国側がすべきではないか。

 日本大使館前では若者らが抗議活動をしたほか、インターネットで強硬姿勢を求める書き込みが急増。現場付近で抗議活動をする構えを見せていると伝えられる。中国政府自ら反日感情をあおるようなことがあってはなるまい。

 尖閣諸島は1895年、沖縄県に編入。今は無人だが、かつては住民の建設した船着き場やかつお節工場などがあった。第2次世界大戦後、サンフランシスコ条約でも領有権を認められている。中国が主張し始めたのは石油埋蔵資源の可能性が分かった1970年代になってからである。

 近年は、島に上陸を目指す中国や台湾の活動家らが領海に侵入するなどトラブルが絶えない。東シナ海では中国海軍の艦船の航行も活発になっている。

 折しも陸上自衛隊の国境警備隊を南西諸島に配備することが検討されているとの報道があった。中国国内では、日本が尖閣諸島の実効支配を強めようとしているとの見方が広がっているという。

 昨年秋の日中韓首脳会談で「東シナ海を友愛の海に」との鳩山由紀夫前首相の提案に、温家宝首相も賛意を示した。長年の懸案だったガス田共同開発でも条約締結の交渉が始まったばかりだ。

 こうした動きに今回の事件が悪影響を及ぼさないよう、ともに冷静に対処する必要がある。特に中国側には自制を求めたい。




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