2010年9月8日
牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショー(東京)のアルバイト店員が残業代の支払いを求めていた裁判が、原告の主張を会社側が全面的に認め決着した。だが、会社は店員と「雇用契約がない」との主張を変えておらず、店員が加入する労働組合との団体交渉には応じていない。
訴えていたのは、仙台市の店舗で働く福岡淳子さん(43)ら3人。残業代の割り増し分約100万円の支払いを求めて2008年に東京地裁に提訴していた。争う姿勢だった会社側は8月下旬、原告の主張を全面的に認めた。
福岡さんは00年にアルバイトとして入社し、調理、接客、事務などを担当していた。深夜や休日も働いていたにもかかわらず、支払われていないとして、05年10月から06年10月までの割り増し分などを請求した。
8日に会見した福岡さんは「裁判の結果は大変うれしい。だが、会社は団交のテーブルにつかない。従業員が安心して働ける環境にはほど遠い」と話した。
福岡さんは07年に首都圏青年ユニオンに加入。会社側が残業代の支払いについて団体交渉に応じないため、東京都労働委員会に申し立てた。会社は「(3人とは)労働契約ではなく、請負契約に類似した業務委託」などと主張して応じなかったため、民事裁判を起こした。
東京都労委は09年、同社に団体交渉に応じるよう命令。会社側は不服申し立てをしたが、中央労働委員会は今年7月棄却した。ところが、会社側は「使用従属関係を有さず、(中略)労働条件等処遇について決定しうる権限を有しない」と従来の姿勢のままだという。
ユニオンの河添誠書記長は「アルバイトだからといって労働者の権利が損なわれてはならない。今回の勝利はアルバイトとして働くすべての人を励ますものだ」と評価。一方で「労働委員会の命令を無視して団体交渉に応じないのは法律違反だ。大企業として許されない」と批判する。
ゼンショーの広報担当者は「コメントは差し控えたい」としている。