陽川区の無差別殺人、容疑者の素顔 /ソウル(下)
■家庭に劣等感、腹いせに犯行
京畿大犯罪心理学科のイ・スジョン教授は「極めて非社会的な人物だ」と指摘した上で、「Y容疑者は10代後半に犯罪を犯し、20代を刑務所で過ごしたため、社会性を完全に欠いている」と指摘した。イ教授はまた、「Y容疑者は自暴自棄の状態で、被害者が自分にはない『幸せな家庭』を持っている事実に激憤し、腹いせに犯行に及んだ。劣等感の対象が金銭ではなく家庭だったため、所得水準については全く考えなかったはずだ」と分析した。それを裏付けるように、Y容疑者は犯行後、金品を奪わずに逃走した。
■法務部の施設で生活
Y容疑者は犯行後も、現場から6キロほど離れた韓国法務保護福祉公団生活館で平然と暮らしていたことが分かった。Y容疑者は強盗、強姦(ごうかん)などの罪で14年6カ月服役後、5月に順天刑務所を出所し、同施設で生活していた。
Y容疑者と同室だった男性(37)は、「Y容疑者は静かな人だった。新亭洞の殺人事件の指名手配や監視カメラの映像もニュースで見たが、彼だとは思いもしなかった」と話した。Y容疑者は未明に施設を出て、深夜まで工事現場で働いていたため、周囲にはあまり知られていない存在だった。
法務保護福祉公団は出所者の社会適応を支援するため、二人1室の居住空間を提供し、無料で職業訓練も行っている。生活館では、審査を通過した出所者が6カ月にわたり生活し、仕事が見つからなければ2年間まで利用期間を延長できる。同施設では、日雇い労働や運転代行などで働く出所者約50人が生活している。
警察は施設入居者のリストを調べたが、Y容疑者の写真が実際とは異なっていたため、発見につながらなかったという。
公団側は、入居者の管理をほとんどしていなかったことが分かった。公団側は「驚いている。われわれは出所者の更生を支援する機関であり、監視する機関ではない。職員も8人しかおらず、(犯行事実を)知るはずがない」と話した。
アン・ジュンヨン記者