きょうの社説 2010年9月12日

◎金大法科大学院 生き残りかけての試練続く
 法科大学院修了者を対象にした2010年の新司法試験で、金大の合格者は過去最多の 17人、合格率も法学未修者が加わった07年以降で初めて全国平均(25・41%)を超え、31・48%となった。08年の4人(合格率9%)、09年の11人(同22%)と近年の推移をみれば、一定の教育成果がうかがえる。

 全国的には合格率は過去最低となり、合格者も2074人にとどまった。「10年ごろ に年間3千人程度」という政府目標を大幅に下回り、目標年度を迎えたことで制度の抜本的な見直しは避けられないだろう。法科大学院の統合や定員の削減が進む可能性もある。

 金大法科大学院は北陸唯一の法曹養成機関とはいえ、生き残りをかけた試練がこれから も続くことに変わりはない。合格率は全74校中14位となったが、上位校は50%近くに達しており、教育体制で改善の余地はまだあるはずである。

 新司法試験の合格状況は、大学全体の評価にもつながるだけに、金大は法科大学院の質 の向上を全学的な課題として位置づける必要がある。北陸三県の法曹界を巻き込んだ体制を強化し、合格率をさらに伸ばすことで地方の拠点校としての評価を定着させてほしい。

 新司法試験は今年で5回を数え、合格者は上位5校で40%を占めるなど学校間格差は 一層鮮明になってきた。これまでの合格者が計3人にとどまっていた姫路独協大は新規の学生募集を打ち切り、これから淘汰が始まる兆しも見える。

 合格率低迷で入学者が減少する傾向もみられるなか、中教審の特別委員会は昨年、入学 定員の削減や選考の厳格化を求めたほか、法務、文部科学省の検証チームの議論では、不振校には補助金削減や教育派遣の中止といった厳しい意見も出ている。悪循環を断ち切る方策を打ち出す時期にきていることは確かである。場合によっては法曹の将来像についても見直しが避けられないかもしれない。

 金大も定員を40人から25人と大幅に削減した。合格率を伸ばすには入学段階で質の 高い人材を確保する必要がある。法曹志望者の信頼を得る道は、合格率の実績を着実に積み重ねていくことである。

◎減少する農業人口 前向きの動き途切らせず
 2010年の「農林業センサス」は、農業人口の高齢化と減少に歯止めがかからない、 悩める日本農業の姿を示している。この25年間で280万人以上が農業を離れ、現在の就農者の平均年齢は、ついに65歳を超えた。それでも、日本農業の「老化」の一方で、経営規模の拡大や農業の「6次産業化」といった前向きの取り組みも高まっている。こうした積極的な動きをさらに活発にさせる施策が望まれる。

 今年のセンサスによると、農業就業人口は260万人で、5年前の前回調査時より75 万人も減少した。高齢化による離農が主な原因で、減少率は22・4%と過去最大となった。農家と法人組織を合わせた農業経営体の総数も16%以上減少し、167万6千(富山県2万3千、石川県1万8千、福井県2万)となった。

 ただ、減少理由として、大規模農家や企業に農地を貸し出し、農業から手を引く人が増 えたことも挙げられる。それは、生産性の向上に必要な経営規模の拡大が進んでいることの裏返しでもある。実際、全耕地面積は1・5%減少したが、5ヘクタール以上の経営体の耕地面積は増えているという。

 一方、農業の6次産業化の状況をみると、農産物の加工に組む農業経営体は3万4千に 上り、5年前より43%増加した。観光農園や農家民宿なども増えている。

 また、農産物の産地直売所は5年前より3千多い1万7千(富山県179、石川県10 5、福井104)を数え、経営を多角化し、付加価値を高めることで収益を上げる努力をうかがわせる。

 6次産業化とは、1次産業の農業と2次産業の加工、3次産業の流通の連携・融合によ って新たな農業ビジネスをめざすことで、民主党政権も農政の目玉の一つにしている。ただ、支援策は加工機械の導入、施設整備の補助が中心で施策も予算も物足りない。

 さらに、戸別所得補償制度の導入で、農地の貸し出しをやめる人が増え、大規模農家な どの経営規模拡大の動きにブレーキがかかる懸念もある。同制度の正負両面を見極める必要がある。