殴られる教諭に人権はあるのか?

届け出の件数、8年間で9倍に

 京畿道の文科系高校に勤務する女性教諭のAさんは今年7月、病気休暇を取得し、しばらく学校を休んだ。掃除の時間に遊んでいた女子生徒をしかったところ、顔や胸を殴られ、全治2週間のけがを負い入院したのがきっかけだった。生徒は「先生が先に手を上げたため、身を守ろうとした」と主張し、保護者も「うちの子がうそをつくわけがない」と反発した。Aさんにとって、外傷より心の傷の方が大きくなる結果を招いた。

 大邱市教育庁では今月7日、教育監(教育長に相当)の主宰で緊急の会議が行われた。同市のS高校で起こった、教師に対する暴行事件を受けたものだ。同校のB教諭が、長期間の無断欠席など、問題行動を繰り返していた生徒を転校させようとしたところ、生徒の両親が後輩二人を連れて校長室へ押しかけ、校長や同僚たちが見ている前でB教諭に殴る蹴るの暴行を加えたのだ。B教諭は全治4週間のけがを負い、また暴行の現場を目撃した教頭も、ショックを受け精神科の治療を受けた。

 大邱市教育庁は会議の結果、教育関係者や専門家らによるタスクフォース(特別作業班)を結成し、児童・生徒だけでなく、教師の人権を擁護する内容の「大邱教育権利憲章」を2012年までに制定する方針を決めた。

 ソウル市教育庁が、教師の生徒に対する体罰を禁止する一方で、教師を暴力から守るという問題が新たに浮上している。大邱市教育庁が緊急会議を開いた日、韓国教員団体総連合会(教総)は、「学校で教師たちが正常な教育活動を行えるよう保護するため、『教員の教育活動保護法』が早急に制定される必要がある」という声明文を発表した。

 教総はまた、生徒や保護者が教師に暴力を振るう事件が発生した場合、学校がどう対応し、処理するかという方針をまとめた「教育権侵害対応マニュアル」を早急に製作・配布することも求めた。

 今年5月の教総の発表によると、教員が暴行を受けたり、暴言を浴びせられたという届け出は、昨年には108件に達し、2001年(12件)に比べ9倍に増えた。

 子どもが少しでも不利益を被れば、学校へ押し掛けて教師を脅したり、暴行を加えたりする保護者も増えている。08年、ソウル市内のある中学校では、教師がけんかした二人の児童と保護者を呼んで仲直りさせようとしたところ、一方の保護者が教師の顔にお茶をかけたり、頭部を足で蹴ったりし、全治4週間のけがを負わせる事件が起こった。

 専門家たちは、教師と生徒・保護者の双方による暴力事件が起こるという状況で、まず信頼関係を回復するべきだ、と指摘した。教総のキム・ドンソク・スポークスマンは、「教師は体罰によらず、児童・生徒に対し教育的な指導をする方法を確立し、これを教員養成カリキュラムにも盛り込む必要がある。また、保護者たちも自分の子どもだけがかわいいという態度を取らず、教師を尊重する姿勢を自ら示していくべきだ」と語った。

呉允煕(オ・ユンヒ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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