消費税増税の大合唱が始まっている。全都道府県知事対象のアンケートで半数を超える28人が消費税増税に賛成だと報じられた。財源に苦慮する事情はあろう。だが短慮、早計は国の針路を誤る。
日本の国債残高は主要先進国中最悪の水準にまで積み上がっており、このままでよいはずはない。しかし、数ある税の中でなぜ消費税なのか、もっと議論していい。
例えば所得税の最高税率引き上げや金融資産課税など、他の手段もあろう。だが、政党がそれらを検討したという話は聞かない。
消費税には逆進性がある。収入が消費に回る割合は低所得者ほど高く、その増税は弱者へのしわ寄せとなる。取りやすいからといって飛びつくのは安易に過ぎる。
1989年の消費税導入前の日本は、高額所得者の税率が高かった。一部の論者は「国の活力を失う」と批判していたが、そのおかげで世界に例のないほどの平等社会を実現していた側面もある。
今はどうか。逆に先進国トップクラスの格差社会だ。今の日本は、親の収入と子の学力が比例しているという研究がある。個人の努力で豊かさが実現できる社会と、生まれ落ちた時点で自己実現が制約されてしまう社会。どちらがよいかは自明であろう。
つまり、税制は目指す社会像にもかかわるのだ。政治家はその点をこそ議論すべきだ。
消費税増税論者は一様に「社会保障の財源に充てる」と主張する。知事らが挙げる理由も大半が「社会保障費増大」だった。だが過去を振り返ってみるといい。
消費税の税収累計は224兆円に上る。この間、法人税は相次いで減税となり、減収額は累計208兆円に達する。消費税のほぼ全額が法人税減税の穴埋めに回ったのだ。今回も法人税減税が検討されており、社会保障ではなく、その穴埋めに回されかねない。
財政再建につながるとの見立ても早計だ。消費税だけで財政赤字を黒字化しようとすれば税率は27・3%にしなければならない。すると消費は凍り付き、国内総生産は6%も下がる。その影響で次の年には再び赤字化する。効果が続かないのだ。
まずなすべきは無駄遣い削減であろう。年金基金など特別会計の問題もある。防衛費の事業仕分けはしないのか。これらを徹底してこそ、次の議論に入れる。
次の記事:>> 今日の記事一覧
今月の記事一覧
最近の人気記事
Photo History
琉球新報掲載写真でつづるオキナワの歴史
しんぽう囲碁サロン
世界中の囲碁ファン会員と対局
ライブカメラ
琉球新報泉崎ビルに設置したライブカメラ
りゅうちゃん商店
ウェブサイトからも購入可能に!
ちょBit
新報パーソナルアド
ウイークリー1
沖縄県内・県外就職・求人情報ニュースサイト
琉球新報の本
琉球新報の本がネットでも購入できます
週刊レキオ
生活情報満載の副読紙。毎週木曜お届け
新報カルチャーセンター
130講座 学ぶ楽しさがいっぱい
新報ローカルブログ
ミニコミ紙連動のローカル情報
〒900-8525 沖縄県那覇市天久905
紙面・記事へのお問い合わせは、読者相談室までどうぞ。
電話098(865)5656 (土日祝日をのぞく平日午前10時〜午前12時と午後1時〜午後4時)
©The Ryukyu Shimpo
本ウェブサイト内に掲載の記事・写真の無断転用は一切禁じます。すべての著作権は琉球新報社または情報提供者にあります。