これはOECDの対日経済審査報告のデータを検証したものだが、たとえば全年齢のジニ係数(高いほうが不平等)でみると、日本は所得再分配前の「市場所得」では調査対象となった14ヶ国のうち11位と平等なほうから4番目だが、再分配後の「可処分所得」では5位と順位が上がっている。特に労働年齢層の悪化がひどく、再分配によってランクが7つ上がっている。
多くの場合は絶対的なジニ係数や貧困率が上がっているわけではなく、分配前と分配後でほとんど変わっていないだけだ。しかし子供のある家庭では、前の記事でも紹介したように、再分配によって貧困率が上がっている。こうしたゆがみの原因として、太田氏は次の2つをあげている:
このゆがみは、団塊の世代が年金生活に入る2012年以降、急速に拡大する。特に日本の年金会計は3割が国庫負担になっているため、財政危機も悪化させる。また消費性向の高い勤労者から低い高齢者に所得を移転することは、成長率を低下させる。消費税が「逆進的だ」などと騒いでいる人がいるが、国民年金はサッチャー政権でさえできなかった人頭税である。
必要なのは無原則に金をばらまく「強い社会保障」ではなく、高所得者への年金支給額などをカットして所得に応じた分配にすることだ。根本的な解決策としては、負の所得税やベーシック・インカムのような一律の再分配に変更する必要がある。それは老人べったりの民主党政権では不可能だが、若者が団結して要求すれば遠い将来の政治的アジェンダにはなるかもしれない。
多くの場合は絶対的なジニ係数や貧困率が上がっているわけではなく、分配前と分配後でほとんど変わっていないだけだ。しかし子供のある家庭では、前の記事でも紹介したように、再分配によって貧困率が上がっている。こうしたゆがみの原因として、太田氏は次の2つをあげている:
- 労働年齢層(現役世代)への社会保障給付が小さいことのほか、税による再分配が小さいことも量的にはかなり寄与している。中間層と低所得者の税率の差が小さいこと、特に欧米との比較で中間層の税率が低いことが、日本の相対的貧困率を高くする方向に影響している。
- 労働年齢層への社会保障給付が少ない中、家族政策支出等が小さいことが、特に子供のいる世帯の相対的貧困率を多くの欧州諸国と比べて高めのものとしている可能性がある。
このゆがみは、団塊の世代が年金生活に入る2012年以降、急速に拡大する。特に日本の年金会計は3割が国庫負担になっているため、財政危機も悪化させる。また消費性向の高い勤労者から低い高齢者に所得を移転することは、成長率を低下させる。消費税が「逆進的だ」などと騒いでいる人がいるが、国民年金はサッチャー政権でさえできなかった人頭税である。
必要なのは無原則に金をばらまく「強い社会保障」ではなく、高所得者への年金支給額などをカットして所得に応じた分配にすることだ。根本的な解決策としては、負の所得税やベーシック・インカムのような一律の再分配に変更する必要がある。それは老人べったりの民主党政権では不可能だが、若者が団結して要求すれば遠い将来の政治的アジェンダにはなるかもしれない。
コメント一覧
日本は高額所得者を口汚くののしっても、高額資産者はまったくスルーされる。あの日本共産党ですら高額資産者の味方なのだから、貧乏人には厳しい国だと実感します。
将来を保障するための年金が逆に将来を危うくしているの図ですね。年金なんて払わない方が得策かも知れません。
以前の記事にあったように 一旦年金を国民に全額利子付きで
返金しリセットする事に賛成します
同時に社会保障番号(納税者番号)の導入をすべきです
橋下知事の様な情報発信力のある政治家が国民に十分な説明を
する事が出来れば 簡単なんでしょうが
年金をすべて民営化することについて言えば、時期を逸していると思います。方法としては、一元化しかないでしょう。さしあたり国民年金と公務員の年金を一元化するしかないと思います。でも、公務員たちは反発しますよ。民主党のような、「公務員政党」にはやれないと思います。
池田さんが言うように、国民年金は「人頭税」でしょうね。だったら、尚のこと、一元化するしか今は方法がないと思います。廃止するにはあまりに時期を逸してます。とりあえず、公務員に泣いてもらうしかないw
「ジニ係数や貧困率は上がっていないので『所得の逆分配』というのはおかしい」とかいうコメントがきたが、OECDも指摘しているように、再分配によって日本の所得分配は各国の中で相対的に不平等になっている。本文にも書いたように、絶対的にはそれほど変わらないが、子持ちの家庭では貧困率が上がっている。
余談ですが、消費税増税は無理です。現状、法人税の実効税率は20%程度です。そのような状況下では、法人税減税とのバータも成立しません。消費税増税は、法人税の実効税率が30%以上になってからでないとやれないでしょう。ボコボコにされて、ようやく分かりましたw
それでも財務省は、民主党政権を抱き込んで消費税増税をやろうとするでしょう。他方、民主党政権は企業に正規雇用増を押し付けるでしょう。これは大きな政策的矛盾です。なぜなら、消費税が増税されれば、企業は今以上に非正規社員数を増やして人件費の仕入れ控除をしなければならなくなるからです。そこらへん、「増税すれば景気が良くなる」だの「金利が上がれば景気が良くなる」だのと言っている民主党のおバカさんたちは分かっておるのやろうかと思いますねw
それにしても、「消費税は消費者が負担する益税」などと言う人は、何を勉強したのやらと思います。消費税は、事業者が負担する売上税であり、「損税」です。
国民年金しかかけてない老人は月8万ぐらいしか貰ってないけど、定年間際に年収1千万ぐらい貰ってた程度の公務員で月に30万ぐらい貰ってる例を知ってます。
前者が圧倒的多数のような状況でも現在のような世代間格差は再現されるんでしょうか?
子どものある世帯の相対的貧困率厚生労働省発表のものをみますと、一人親の場合が50%以上ですから、こちらが問題かもしれません。二人親のいる場合の子どもは10%ぐらいだと思います。
この算出方法、等価可処分所得がどうかです。えっと500万円の4人家族=250万円の一人ぐらしだそうです。
シングルマザーを問題にすれば改善する可能性はありますが、実態を調査検証すべきでしょう。で若者はどう貧困なんでしょうか?
90年代、湾岸戦争前のことですが、テキサスは70年代に早くもバブルを迎えた後に停滞し、当時は銀行や保険屋がつぶれ、家財や家を売って手術代にする人がいたり、ビルにテナントが入らず豆腐や一軒というさびれた風景が見られました。
「対策として所得税をなくして、プロパティータックスと消費税で、誘致や人口流入を促している、あなたの子供の教育費も住民が払っているんだよ。日本人学校なしに家族を呼び寄せるのはおかしいね。」と厳しい指摘を受けたことがあります。
その後の不動産バブル時に不動産価格があまり上がらなかったのは銀行が慎重であったからか、あるいはプロパティータックスが錨の役目を果たしたのかは定かではありませんが、州法でフォークロージャーまでの期間が短かいので、リーマンショック後の処理がすみやかで、現在カリフォルニアからの企業移転や人口流入が激しいということです。日米の地方政治の機能には差が大きいですが、部分的に取り入れたり、地価が中庸な新興住宅地では可能ではないかと考えをめぐらせる今日この頃です。
いよいよ2012年以降、「最大不幸の時代」がやってくるのですね(笑)
国民の大多数が自己実現の道を絶たれ、ただひたすら今日を生存するためだけに、身を削って働き続ける世界。
理想も、夢もなく、あるのはつかの間の享楽だけの世界。
人生という時間をひたすら、己が病に倒れるまで「浪費」し続ける世界。
そういえばニーチェがすでに予言していたように思います。
むしろ高齢者から若年への再配分、というのは分かるのですが、年代別の所得格差(ジニ係数)をとると、高齢者ほどジニ係数が上がるってことはないでしょうか?一部の高額所得者と多くのジリ貧困という構図です。
直接のデータは探しきれませんでしたが、
・総資産は高齢者ほど多い。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/note/notes0305.pdf
・金融資産は高齢者で減少する。
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2009/01/post_4462.html
から、結局、貧富の差とは「不動産」と考えます。
(といってもネットなので傾向ぐらいで考えてますが)
再配分できるのは「不動産」、これをどう扱っていくかでないでしょうか?
再分配の7割以上が老人福祉にあてられているわりには、高齢者層の不平等も-5位、14カ国中2位で相当、不平等なのがどうもおかしい。老人福祉分野の内容にも問題がありそう。
少子高齢化でこれからますます国民の構成比に占める老人の割合が高くなることを考えると、
民主党に限らずどの政党も合理的に振舞うなら票にならない若者優遇でなく老人優遇を掲げるでしょうね。
もちろん、記事にあるようにたとえ少数派であっても一致団結して組織票となれば別な可能性もありますが、
若者同士でさえも正規雇用と非正規雇用などで対立してる様子を見るとなかなかありそうになく思えますね。
jestemnekoさん
消費税の件について、消費税は「最終消費者が負担するもの」であり、企業は売上消費税から仕入消費税を控除した分を国庫に納付しているだけです。
企業は税率が何%になっても損得はないようになっているのが基本です。失礼ですが勘違いされておられませんか。
(簡易課税業者とか、納税事務コストとか、細かい話は別とします)
yoshi78561234さん
> 企業は税率が何%になっても損得はないようになっているのが基本です。
世の中はそれが基本なんですね。
小生のようなメーカからの請負の場合は、消費税増税時には増税分で請求するように交渉するつもりですが、メーカ側が競争力維持のために価格を据え置きたいからという理由で値下げ(単価の切り下げ)が要求されることは、前回の経験から目に見えています。まぁ、強みがあるので屈しませんけどね。
ネットでちらっと調べただけでは判らなかったのですが、過去の消費税増税時に増税分が全て最終消費者に転嫁されているといったデータとかあるんでしょうか。
yoshi78561234さん、あなたの視点は徴税する側の視点です。納税する側の視点ではありません。企業にしてみれば、消費税は赤字でも納税を強いられる売上税ですよ。経営者の方々にボコボコにされて分かったのですが、国税庁は「預金を差し押さえる」とか言って赤字経営で苦しんでいる企業を脅しているそうじゃないですか。法人税の実効税率が20%程度でしかない状況下でそんなことをやってはいかんですよ。
法人税の実効税率が20%程度になるくらいに日本経済が病んでいるということを知らないで消費税増税を言ってしまった自民党は無知を反省しなければなりません。ただ、面子というものもあるので、当面、民主党政権の消費税増税に協力しないというふうにするしかないでしょう。
私個人は、法人税の実効税率が30%以上になり、法人税減税とのバータが可能になった場面なければ消費税増税はやれないと考えます。おそらく、10年以上先になるでしょう。財政の健全化につて言えば、当面、公務員給与を一割以上カットするとか、そういう行政リストラを積み重ねる以外に方法はないでしょう。
sabottenderさん
見掛け上どちらが負担しても同じだと思います。税負担を価格に転嫁すれば売上数量が減るでしょうし、転嫁しなければ単価が減ります。
消費税は「最終消費者が負担するもの」だからというのは、制度上の話で実質的には企業に損得は及びます。経済学上では、従価税が増加すれば、生産者余剰(下三角面積)も消費者余剰(上三角面積)も減りますから。
法人税の実効税率が20%程度の状況下では消費税増税はやれません。財界側も法人税減税とのバータは成立しないと言っています。
財務省は、社会保障費の増大を問題にして消費税増税を言いますよ。しかし、社会保障費の増大は長期的な問題であり、したがって解決策も長期的なものでなければいけないでしょう。
私は経済素人ですし、あくまでも個人の意見として言いますが、教育や福祉、医療といったものは、地域通貨でサービスを受けれるような方向に変更するしかないと思います。そうするためには、地方分権をやるしかないでしょう。しかし、民主党が言っているような地方分権ではダメだと思います。ある程度以上の徴税権と通貨発行権を地方に譲渡するような方向で地方分権を行うしかないと考えます。
もっとも、官僚の抵抗は激しいですよ、そのような「正しい地方分権」に対してはw
jestemnekoさん
>企業にしてみれば、消費税は赤字でも納税を強いられる売上>税ですよ。
何度も申し上げますが、消費税は企業負担でなく、最終消費者が負担する仕組みになっており、もし売上消費税より仕入消費税の方が多ければ還付されます。簡易課税業者のみの話をされているのでしょうか?
企業の決算では消費税は損益計算表上何の影響もなく、貸借対照表上、未払金(未払消費税)として計上されます。
仮定として最終消費者だけに税込売上105円(税抜100円)、仕入が消費税計算対象外の人件費のみの120円の企業があったとします。この企業は差引20円の赤字となりますが、売上消費税5円分を納付しなければ、本来最終消費者から受け取り、国庫に納付すべき5円が企業の「益税」となってしまいます。
susumu_2009さん
> 見掛け上どちらが負担しても同じだと思います。
主語がないので、何が同じなのか判りかねます。
池田氏のブログを読んでいる限り、消費税の増税は、その負担を収入を得ていない高齢者層からも広く平等に取りましょうという文句です。増税分を最終消費者が負担するか事業者(現役層が給料減という形で)が負担するかでは違いがあると思います。
> 消費税は「最終消費者が負担するもの」だからというのは、制度上の話で実質的には企業に損得は及びます。
制度上、消費税は「最終消費者が負担することを前提としてる」だけであって、「最終消費者が負担する」となっていないと思いますよ。
このため、最終消費者、販売者、仕入先を考えた場合、基本、価格の設定は販売者が優先権を持ちますから、最終消費者にはN%の転嫁、仕入先にはN+M%の転嫁なんてこともできるでしょう。
なので、制度上、増税時の負担は、各々のビジネスに関連する企業間の価格交渉やビジネス環境によって決まり、損得が発生する可能性があるのが基本と思います。
小生の考えを否定するには、最終消費者への転嫁が行われているのかどうかを示すデータがあればよい(もしくは、長期的には最終消費者の転嫁へ収束するとか)のかなと思い、そういうデータってあるんでしょうかとお尋ねしました。
yoshi78561234さん、あなたは現実の企業活動が分かっていない。つまらない講釈はいい加減にしてはどうかと言いたくなります。
現実の市場では、消費税があろうななかろうが、商品価格は売り手と買い手の関係で決まります。したがって、不況下では、企業はぎりぎりの価格設定をするしかない。法人税の実効税率がきわめて低いということは、企業には商品価格に消費税増税分を上乗せする体力がほとんど残っていないということです。それが日本経済の現状です。
そんなに消費税が消費者負担だと言うのなら、国税庁は消費者から直接徴税すればよいではないですか。集金係が歩き回ればよい。なぜ、国税庁は消費者から直接徴税しないのですか。現実に、企業から直接徴税する以上、消費税は企業が負担する売上税であると言うしかない。
日本の経済を支えている企業を倒産に追い込むことはできません。公務員給与を一律三割カットして公務員の年金と保険を国民年金と国民健康保険に組み入れるくらいのことをしなければ、消費税増税は絶対に無理。民主党政権が言い出したら国会で潰すしかないと思います。
sabottenderさん
横入りして気を悪くされたら申し訳なかったのですが、別におっしゃっていることを否定しているわけではありません。
以下、ご参照ください。
国税庁 消費税のしくみ
「最終的に税を負担するのは消費者となります。」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6101.htm
あと、余剰分析については良い資料がありませんが、価格に消費税を上乗せしたら商品の需要が減り売上が減るという単純なことを言っているだけです(よほど需要の価格弾力性が小さくない限り)。もちろんおっしゃるように下請けにもその影響は波及すると思います。