日本の次期首相を事実上決める民主党代表選を見ていて、以前からそう感じていたことを再確認する思いがしています。それは、菅直人首相というのはある意味、単純なまでにあからさまに分かりやすい言動をとる人だなあということと、対する小沢一郎氏はあいかわらず頑迷というか、自説に固執する人だなあという点についてです。昨日は、防衛問題に関してこの二人の言及があったので、並べて比較することにします。
昨日午前、菅氏は市ヶ谷で開かれた毎年恒例の自衛隊高級幹部会同に出席し、「自衛隊の最高指揮官としてわが国をしっかりと守り抜くという覚悟を諸官にまず、お伝えしたいと思います」とあいさつしました。それ自体、何の文句もありません。で、昨日夕には、首相官邸に自衛隊幹部らを招き、これも恒例の高級幹部会同懇親会を開きました。そのときの冒頭あいさつは以下の通りです。
「国民の皆さんが、私は、自衛隊の活動に対して高い評価と敬意を持っていただいていると思うので、これからもそういう国民の皆さんの理解、あるいは皆さんに対する期待、そういうものを大事にして一層奮闘をお願いしたいと。私が最高司令官でありますので、最後までどうぞ最高司令官として主催の懇親会ですので今日はゆっくり楽しんでください」
…最高指揮官、最高司令官という言葉を意識的に連発しているのが分かりますね。これは明らかに、8月17日に統幕・陸海空の4幕僚長と意見交換会を開いたときに、「私も改めて法律を調べてみましたら、総理大臣は内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有するというふうにされております」とあいさつし、新聞各紙に「そんなことも知らなかったのか?」と書かれたことを気にしてのことでしょう。
菅氏やその内閣は、報道機関にどう書かれるかにものすごく敏感なようで、ある日の紙面で批判や厳しい指摘を書くと、その日夜のぶらさがり取材などで自らそれを打ち消し、「自分たちはそうじゃないんだ」といいたがることがけっこうありました。いかにも場当たり的、その場しのぎ的ではありますが、まあ、批判が少しは届いていて、それをきっかけに少しでも対応を改めてもらえれば、という救いも感じます。
一方、小沢氏はどうか。3日のテレビ朝日の番組で、在日米海兵隊について「現実には2000人しかいない」と、どういう根拠に基づくのか不明の発言をしていましたが、それについて昨日の記者会見で以下のようなやりとりがありました。小沢氏はなんだかんだ言いながら、自説は曲げません。
記者 普天間問題について。小沢さんは沖縄の海兵隊の実戦部隊はいらない、現実には2000人しかいないと先日テレビで言っていたが、岡田外務大臣は1万人の海兵隊がいると言っている。どういう根拠に基づいて海兵隊の話をされているのか。
小沢氏 あのー、海兵隊をはじめ実戦部隊を前線に張り付けておく必要はないというのは、私の意見ではなくて、アメリカの戦略の基本であります。ですから、ヨーロッパからも部隊を大きく今、引き揚げつつあると思います。これは、アメリカに直接聞いたわけではありませんが、多分、軍事技術の進歩やら、アメリカの費用対効果の問題やら、いろいろなところからアメリカの世界的な軍事戦略ちゅうのは、膨大な兵力を前線を置いとく必要はないというふうな考えになったんだろうと思っております。その意味で私もそういう考え方に賛意を、同意を同じように思っているということでございます。
それから、2000人と、え?1万人いると言ったの?どこからだれに聞いたというわけではありませんが、かなりの部分はすでにグアムが中心かどうか、これも分かりませんが、海兵隊はほかのところに展開していて、現実には沖縄にいるのは2000人規模だというふうに聞いております。
…だからぁ、誰に聞いたわけではなくて、どう聞いたんだよ!と言いたくなりますが、4日付の本紙は次のように報じています。
《米国防総省の資料によると、日本駐留の海兵隊は約1万7000人で、岩国基地(山口県)の約3000人を除く約1万4000人が沖縄に駐留。このうち常時1000人程度がアフガニスタンとイラクに派遣されているが、1万3000人程度は沖縄にいる》
《小沢氏は「海兵隊の実戦部隊はいらない。米国もいらないと思うから引き揚げている」とも述べたが、これも誤りだ。在日米軍再編でグアム移転を予定する海兵隊の8000人は司令部や後方支援部隊で、実戦部隊は沖縄に残るからだ》
…沖縄に海兵隊が2000人しかいないとしたら、どうやって8000人を移転するのでしょうね?まあ、小沢氏はずっと以前から、自信たっぷりにデタラメを述べる人であることは、私のブログの読者であればよくご存じのことでしょうが。
小沢氏は、いろんな問題について「だいぶ古い時代の情報」(一括交付金に関する石井隆一富山県知事の発言)や、単なる思い込みで口にし、生来の負けず嫌いと唯我独尊から絶対に訂正しないということを繰り返しているようです。周囲には、自分に直立不動でぺこぺこする人物しか置かず、少し実力を蓄えてきた有能な人はすぐ遠ざけるということの繰り返しでしたから、余計そうなるのでしょう。
菅氏は、もともと本当にやりたいことなどなく、ただ偉くなりたいだけで政策などないので、目の前の事態次第ですぐブレます。一方、小沢氏は「人に注意されると絶対にそれに従わない天の邪鬼な性格」(元側近)なので、短期的にはブレないように見えますが、でも、中長期的スパンで言動を振り返ると、安全保障でも外交でも国家観でも何でも大きくブレています。マニフェスト履行をめぐる両者の対立なんかも、このあたりの政治姿勢、というか性格の違いにあるのかもしれません。
簡単にすぐブレ、一応、目の前の現実に対応しようとする方がいいのか、一見ブレずに物事を断行するように見えて、あとから振り返ると当初言っていたことと全然違うではないかという方がいいのか。誰かが「下痢と便秘のどちらがいいかという選択だ」と言っていましたが、言い得て妙だと感心した次第です。
おまけ。一昨日の朝5時ごろ、自宅近くで撮った朝焼けの写真です。実物はもっと「真っ赤」というか「赤黒い」感じだったのですが、カメラに収めると色が褪せていました。ただ、それだけです。
by yula22
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