第一話 俺、本当は熟女が好きなんだ……
ある日、気がつくと異世界にいた。
おお勇者よ、みたいな大げさな召喚もなければ
鏡を通る、穴に落ちる、衣装箪笥の中に隠れるなどのそれっぽいイベントも皆無だった。
何の前触れもなく、だだっ広い草原に投げ出されたのだ。
偶然、近くの村人が通りかかってくれなかったらそのまま野垂れ死んでいたかもしれない。
村に連れてきてもらった後、オレはそこで働くことにした。
文明レベルが中世風なので戸籍などの心配がなく、幸運にもその村の付近は土地も豊かだったので
放牧や畑仕事の手伝い、村に一軒だけある宿屋と酒場を兼ね備えた店の下働きなどで充分に食っていけるだけは稼げるのだ。
この世界には魔法や妖精などが実在していて、王都にでも行けば冒険者ギルドなどがあり
屈強な冒険者たちがダンジョン探索や魔物退治などをしているらしいが、そんなことには全く興味がわかなかった。
ただ平穏な日常を送り、ひっそりと生きていければそれでよかったのだ。
できれば、きれいな嫁さんなんかが欲しかったが。
そんなある日、世話になっているおっさんから俺に見合い話が持ち込まれた。
このおっさんは、俺がこの世界に放り込まれたときに村まで案内してくれて
その後も仕事の口利きや住居の世話などをしてくれた恩人なのだが、
おっさんの姉の子供、つまり姪に当たる娘がちょうど結婚適齢期になるのだがいい相手が見つからず
姉からおっさんにその話が伝わり、めぐりめぐって俺にまで流れてきたのだ。
おっさんには多大な恩義があったためにこの話を断ることができなかったので、とりあえずお見合いをすることになった。
決しておっさんの姪が美人で気立てもいいと評判だったから受けたのではない。本当だぞ。
そしてお見合い当日、内心ドキドキしながら相手の到着を待っていたのだが
現れたのは御年10歳になろうかというかわいらしいお子さまだった……
え? 何これ? ドッキリ? 違いますか、そうですか。
その後、おっさんに年齢の釣り合いがとれないし
そもそもこの子はまだ結婚するような年齢ではないだろうと抗議をしたのだが
返ってきたのは驚くべき衝撃の事実だった。
なんとこの辺りでは、女の子は10歳ほどで俺と同じくらい、つまり20歳程度の男性と結婚するのが当たり前だというのだ。
その年齢で子作りやらかすとか、負担が大き過ぎるだろうと思ったら流石に手を出すのは結婚した後5,6年経ってかららしい。
そうか……おっさんの奥さん、見た目が若々しくて結構美人だなと思ってたんだが本当に若かったのか……
それに俺と同年代の男連中と一緒に飲んでるときに好みの女性の話になって、
ちょっと年上のお姉さんが好きと言ったら、若干引き気味に「お前、熟女好きなんだな」と言ってきたのはそれが原因か!
違う! 俺が熟女好きなんじゃなくて、お前らがロリコンなんだろうが!
……おいこら、そこの友人A。 なに「変態的な熟女趣味はほどほどにして、いい加減に真人間になれよ」といった感じの顔で俺の肩叩いてるんだよ。
おかしいのは俺じゃない! この世界だ!!