2010年9月12日9時11分
強化合宿で女性も一緒になってけいこするブルガリア代表チームの力士たち=ブルガリア東部バルナ、玉川写す
インタビューに答えるストヤノフ相撲連盟会長=ソフィア郊外、玉川写す
角界を巡る「スキャンダル」は、日本だけではなかった。大相撲の大関・琴欧洲関の祖国ブルガリアで今夏、相撲連盟会長が「暗殺組織を率いる中心人物」として捜査当局に逮捕された。渦中の会長は朝日新聞の取材に疑惑を完全否定したが、相撲人気への影響は避けられず、「第2の琴欧洲」をめざす力士らには動揺が広がる。
気温30度を超す古びた体育館で、まわし姿の大男たちが黙々と汗を流す。みんな色白で、彫りの深い顔立ちばかりだ。8月、ブルガリア黒海沿岸のバルナで行われた同国相撲代表チームの合宿。ビニール製の「土俵」には、レオタード姿の女性力士も上がる。
フリスト・フリストフ代表コーチ(26)は「日本の大相撲でモンゴル勢が活躍しているが、ブルガリアからも『第2の琴欧洲』をどんどん送り込みたい」と胸を張る。
レスリングの強豪国ブルガリアに相撲連盟ができたのは15年前。足腰が強く、投げ技にたけたレスリング選手が相撲に転向し、国際大会などでメダルを量産している。琴欧洲もレスリングの有望選手だった。昨年7月には、2人目の出身力士、碧山(田子ノ浦部屋)が初土俵を踏んだ。
相撲の魅力は国民にも受け入れられ、2005年の琴欧洲の大関昇進で人気に火がついた。現在、国内に14の相撲クラブがあり、女性も含め愛好者は500人を超える。
そんな人気に水を差したのが、7月下旬、ペタル・ストヤノフ相撲連盟会長(34)が突然逮捕された事件だった。サッカークラブ会長銃撃など複数の殺人に関与した疑いで、共犯とされる4人も同時につかまり、機関銃など武器も押収された。
しかし、ストヤノフ氏は一貫して容疑を否認。裁判所が捜査当局の勾留(こうりゅう)延長申請を「証拠不十分」と退けたため、処分未決で保釈中だ。