「柔道世界選手権第2日」(10日、代々木第一体育館)
男子は90キロ級の新鋭、西山大希(19)=筑波大=は決勝でアテネ五輪81キロ級金メダリストのイリアス・イリアディス(ギリシャ)に延長で一本を取られて敗れ、銀メダルだった。金メダルが期待された世界ランキング1位の小野卓志(了徳寺学園職)は、3回戦でイリアディスに屈して敗退。同81キロ級でアテネ五輪代表の高松正裕(神奈川・桐蔭学園高教)と、女子70キロ級の国原頼子(自衛隊)は銅メダルを獲得した。同大会での男女通算100個目の金メダルは3日目以降に持ち越しとなった。
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あと一歩届かなかった。一進一退の攻防は5分で決着がつかず、延長1分14秒、西山が力尽きた。「延長では金メダルのことしか考えていなかった。あそこで決められるかどうかが一流との差」。淡々と口を開いた。
初めての大舞台。最初から、頂点しか見ていなかった。「本当は、きょう優勝して、来年の世界選手権、次の五輪につなげるつもりだった」。19歳の若さで世界一に君臨する青写真は、かなわなかった。「満足ではないけど、メダルを取れたことで先につなげる」と、前向きにとらえた。
90キロ級では世界ランク1位の小野の影に隠れがちだが、大器の片りんはのぞかせていた。昨年のグランドスラム東京大会は準優勝。今大会直前のグランドスラム・リオ大会で3位、同モスクワ大会で2位と国際大会出場3試合はすべて表彰台。世界ランク7位で臨んだ初めての大舞台だった。
篠原監督は「去年までジュニアでやってきた選手。よくやったと思う」と評価しつつ、「本来の豪快な技を出していれば。負けたと言うことはけいこが足りないということ」。厳しい言葉はもちろん、期待の裏返しだ。
同じ筑波大に通う1つ下の弟・雄希も73キロ級の強化選手。2人暮らしで兄が炊事、弟が洗濯を担当する。仲の良い兄弟は大舞台での金メダルを誓い合う仲間であり、ライバルでもある。
大会前、弟からは「金メダルを取ってほしくない」「どうせなら兄弟で取りたい」と言われていた。「その通りになってしまった。これで弟と切磋琢磨(せっさたくま)して、来年は2人で金メダルを取りたい」。世界一の目標を、1年後に再設定した。
記念すべき日本の通算100個目の金メダルはお預けとなったが、期待の大器が、大舞台で大きな自信をつかんだ。