押尾被告遺族に謝罪なし、尋問で本性露呈
合成麻薬MDMAを飲んだ女性を死なせたとして、保護責任者遺棄致死罪などに問われている俳優押尾学被告(32)の公判5日目が10日、東京地裁で行われ、亡くなった田中香織さん(享年30)の両親が証人として初めて証言台に立った。被告は軽く頭を下げたものの視線は合わせず、反省の色は見えなかった。
押尾被告は、事件から1年以上たった今まで、田中さんの遺族に謝罪の一言もしていなかった。この日初めて証言台に立った田中さんの父親からは「証拠隠滅のために(119番)通報せず、死人に口なしで香織に責任を押しつけることは、絶対に許せません」と、言葉を詰まらせるほどおえつした声で訴えられた。
母親からは「亡くなった人の冥福を祈る気持ちが何も感じられません。実際に、私たちは、はがき1枚も受け取ったこともありません。人の心を感じられません」と、涙ながらに訴えられた。
法廷でも田中さんの両親とは、1度も目を合わせなかった。母親に「娘の人生に残されたであろう時間と同じくらい長い刑と、娘の尊い命と同じくらい重い刑を」と訴えられると、最後だけ小さく一礼。目頭に手をやり、首を振ってため息をついたが、直後の男性検事の証人尋問では、一転して激しい本性があらわになった。
この日、最後に証言台に立った男性検事から「昨年8月の参考人聴取のときには午後7時40分ごろに亡くなった」と証言していたことを明かされると、鋭くにらみつけた。保護責任者遺棄致死罪で逮捕された1月以降は、死亡時刻は午後6時20分と供述している。最も重要な死亡時刻について供述を幾度と変えていったことを「およそ信じられない」と指摘されると、視線はますます鋭くなった。取り調べ中に、死亡時刻を追求されたときに「突然すごくキレて『ふざけんな、その医者連れてこいよ!』と怒鳴った」と明かされると、顔を紅潮させた。
同検事によると取り調べでは「オレも被害者だ!」と主張したという。さらに「その場にいない人の悪口をよく言っていました。前の取調官や弁護士まで悪く言っていた。その半面で私のことを持ち上げようとした」などと、身勝手な性格が次々と暴露された。
事件を引き起こした自覚、反省の姿勢は、田中さんの両親の前でも見られず、裁判員に好印象を持たれる態度は、およそなかった。
[2010年9月11日8時18分 紙面から]
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