“ホメオパシー”は危ない
8月25日の朝日新聞の第一面に「ホメオパシー効果否定」という記事が掲載されたのを知っていますか?日本学術会議は24日「科学的な根拠は明確に否定され荒唐無稽」とし、医療現場で使わないように会長談話を発表しました。これに続いて日本医師会や日本歯科医師会、日本獣医師会など6団体も賛同する方針です。このニュースを聞いて「よかった」、医療の専門家がこの療法を危ないと認めてくれたと安堵しました。
ホメオパシー療法とは、昆虫や鉱物などの成分の薄めた水を砂糖玉に染み込ませた“レメディ”を飲み薬のようにして使う民間療法です。自然療法と言っています。がんや精神疾患、皮膚病など何でも効果があると宣伝し、全国各地で研修会もやって広めているようです。欧州でも歴史あるといって、ホメオパシーにはまっている関係者もいます。
ホメオパシーを私が知ったのは、昨年ある市の医療ネグレクト死亡例からです。「4か月児がアトピー様の皮膚のジクジクがあり、受診勧奨したが、両親はアトピーの勉強をしているので拒否し、児の自然治癒力を信じていると言っている。予防接種も拒否した。自宅分娩を希望していたが病院で出産した」と母子保健推進員から訪問結果の連絡が保健センター保健師にありました。4ヶ月健診(医師会委託)を受診した小児科医からも受診票には栄養指導が必要。体重が700g減少と記載 してあったので、医師連絡すると「体重が2か月で700g減少して4800gしかない、湿疹、浸出液があり要治療だがホメオパシー療法を助産師から指導を受けている」という情報がありました。
地区坦が訪問(5M10D)。それも10分しか会えなかったそうです。子どもの湿疹は著明、体幹・四肢に治りかけの痕跡、首座り未、表情が乏しい、視線は合うが笑わないなどでしたが、親の養育方法を否定せずミルクを足すように指導 して帰ったようです。その後、保健所保健師と相談し、児相に通告。児相は「引き上げたい」意向のようでも動きはありませんでした。保健師の訪問は拒否なので、ホメオパシーを推奨している助産師に連絡して訪問(5M19D)してもらい、体重4420g、脱水や嘔吐があったので入院勧奨してきたとの連絡を受けています。出産病院に入院を勧めたようなので、そこにも連絡して「治療拒否があれば通告をしてほしい」と依頼しました。
しかし出産病院でも「重度の脱水、低蛋白血症、肝機能・腎機能はOB,重度のアトピー性皮膚炎」と診断され、4〜5日の入院を勧めるが、ステロイド使用は拒否するので小児医療センターに転院が必要と言われました。何とか親を説得して小児医療センター転院したところ、医師は医療行為の拒否はないので“医療ネグレクト”とは診ていないと言われたりしました。その時の入院時体重は4810g、生命の危機あり、2〜3週間の入院は必要との判断だったようです。
児童相談所は「職権による一時保護・保護委託(不適切な養育)」の予定にしていました。母親は入院した後も執拗に退院を希望するので、小児医療センターからようやく児相に通告して職権保護になりました。面会も制限したが納得しなかったとのことです。しかし、子どもは翌日に死亡(6M3D)。死因は不審死。司法解剖したかどうかは分かりません。情報把握から2か月弱が経過していました。この事例の場合は、ホメオパシー療法のレメディにトリカブトを薄めて混入して飲ませていたようです。“毒をもって毒を制す”という考えで、吐くのは良いことと考えていたと言っていたそうです。
ホメオパシーは科学的根拠のある医療を否定して、自然治癒力を待つということですが、4ヶ月児に自然治癒力があると思いますか?とんでもない指導を助産師がやっているという実態を知って唖然としました。この事例はマスコミに発表されていません。
新聞によると、山口地裁では助産師がビタミンKを新生児に与えず死亡させたので損害賠償を求める裁判も起きているようです。ホメオパシー療法を推奨している保健医療などの関係者がいれば気をつけて、効果はないということをはっきり言うべきです。しかし、自然治癒力や自然療法にはまっている親を説得するのは難しいことですね。こういうときは“医療ネグレクト”とアセスメントして法的介入も辞さない決断をするべきでしょう。