呉市は経営が悪化した市交通局のバス事業について、12年4月から一括して民間移譲する方針を決め、市議会に8日、報告した。事業者を今年11月に公募で選考する。現在ある20路線は移譲後も2年間は維持するという。
この日、小村和年市長が全市議が出席する議会協議会に出席し、「ここで決断しなければ将来に大きな禍根(かこん)を残す。厳しい選択だが、呉市民の移動手段の持続的確保を目指して結論に至った」と経営転換について説明した。
呉市交通局のバス事業は県内唯一の公営交通で、職員は224人(今年4月1日現在)、約160台で運行している。08年度は市の一般会計から18億円を借り入れ、高齢化で利用客も過去10年間で約3割減るなど、赤字解消のめどがつかず、市の財政負担削減が喫緊の課題となっていた。
市は、職員給与を削減して公営▽一部営業所を民間委託して公営▽第三セクターを設立して民間移譲▽一括民間移譲の4案に分けて将来を検討していた。接客水準や財務の健全性、人事や事業展開の自由度などを勘案し、一括民間移譲が最善の選択と判断した。
事業者の公募は10月に始めるが、呉市営バスと同規模以上の車両を保有する県内の事業者であることが条件。広島電鉄、広島バス、広島交通、中国ジェイアールバスの4事業者から募り、11月中に事業者を決める予定。12年3月議会で交通事業会計の廃止を議決し、翌4月から民間バス事業者が運行を始める。
職員の待遇や路線維持などが今後の課題で、運営連絡協議会などを開いて公営交通としてのあり方を事業者に求める。事業廃止に絡む経費は、国からの第三セクター等改革推進債で賄う。
市議からは「島しょ部の人など、路線を増やしてほしいという声もある」という質問があり、市側は「少なくても2年は現状路線を維持する。必要のある路線は全部守る」などと答弁。「先月開かれた労使交渉で、職員から公営を希望する声もあった」との意見には、小村市長は「交通局は毎年12億~13億円、市民税の1割をつぎ込む経営で、大きな改革を必要としてきた」と理解を求めた。【井上梢】
毎日新聞 2010年9月9日 地方版