深刻な就職難に直面している大学生を支援するため、卒業後も最低3年間は新卒扱いとするよう求める提言書を日本学術会議(金沢一郎会長)がまとめ、17日、文部科学省に提出した。就職先が決まらずに卒業した学生が不利な扱いを受けないよう、「発想の転換が必要だ」として政府の具体策を求めている。
提言書は、大学教育の改善策を求める文科省の依頼で作成。過熱する就職活動や「切迫感」が学業や精神面に及ぼす支障を問題視して就職活動のあり方の見直しに踏み込んだ。
提言書は「当面取るべき対策」として、国に対し、地方の学生の就職活動を支援する宿泊費・交通費補助制度の創設、就職できない若者への職業訓練の実施と期間中の生活費支給などの具体策を求めた。
一方、企業には新卒要件の緩和を求め、積極的な企業名の公表を提言した。大学にも、卒業後最低3年程度は在学生並みに就職あっせんや進路指導を行うこと、公共職業安定所などとの連携体制構築を求めた。文科省などの就職状況調査によると、今春の大卒者の4月1日現在の就職率は80.3%(前年同期87.2%)で10年ぶりの低水準にある。
一方、大学の教育水準の「品質保証」策として、同会議自ら今後3年間で30程度の主要分野ごとに、学生が身につけるべき基本的な能力や学習成果の評価法などの「参照基準」を策定。各大学の自主的な改善活動を促すことを提言した。特に大学の教養教育で、日本語能力などコミュニケーション能力を身につける重要性を指摘。不安定な身分の非常勤講師に多く依存する現状の改善策を求めた。【山田大輔】
毎日新聞 2010年8月17日 20時01分(最終更新 8月17日 21時06分)