2010年9月11日0時6分
約1年前、政権交代を実現した民主党は、首相以下の主要閣僚が理系出身という珍しさから「理系内閣」と持ち上げられ、世間も大いに変革を期待した。
鳩山由紀夫前首相は、沖縄の普天間飛行場問題で、「国外、最低でも県外への移設」を声高に唱え、「沖縄県民、連立3党、米国」という対立する3変数の連立方程式を快刀乱麻のごとく解いて見せるという意気込みを示した。ところが、方程式は解けず、沖縄県民は激怒し、米国はあざけり、与党のひとつは離脱した。さらに悪いことに、内閣は一致団結とは程遠い状態で、求心力の欠如を露呈して、首相はその座を投げ出した。
普天間飛行場問題に冷淡だった菅直人氏が継いだが、「強い経済、強い財政、強い社会保障」という一層難解な連立方程式を打ち出した。経済に明るいとは思えない首相は、さらに「増税をしても、政府が賢く支出すれば経済は活性化する」という奇説を発表し、消費税増税を打ち出し、その結果参院選で惨敗した。
今、深手を負った菅首相は、同じく手負いの小沢一郎前幹事長と次期首相の座を争っている。だが、傷ついた政治家が復権し、歴史に残る成果を上げることは難しい。加えて、民主党の致命的な問題は、首相の資質よりもむしろ組織としてのベクトル合わせができないことにある。
ジョン・F・ケネディ元米大統領は就任演説で、「つながっていればできないことはほとんどない。バラバラならできることはほとんどない」と述べた。組織利権でつながっている官僚機構に比べ、民主党は政権奪取の初めからバラバラであり、この政権党の未熟さは国民にとって悲劇である。(四知)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。