海軍で実践される「新たな歴史的使命」
ミサイル駆逐艦「深セン」〔AFPBB News〕
「新たな歴史的使命」は人民解放軍海軍が既に具体化している。2009年4月21日、呉勝利・人民解放軍海軍司令官は、新世紀の新たな段階における海軍の「歴史的使命」として「和諧海洋(調和する海洋)」なる新たな海洋秩序を追求すると述べている。
呉司令官によれば、「和諧海洋」とは開放的、実務的、平和的、発展的、協力的な概念だそうだ。
しかし、「和諧海洋」が「歴史的使命」の一部であるとすれば、それは人民解放軍海軍が、従来の領海の範囲を超え、中国の国益を守るため、その活動範囲を拡大することにほかならない。
どうやら、この「新たな歴史的使命」に基づく「和諧海洋」なる概念は、近年人民解放軍が唱える「第1、第2列島線」や米国防総省が「アンチ・アクセス」「アクセス拒否」戦略と呼ぶ最近の中国海軍の様々な動きの理論的根拠になっているようにも思える。
人民解放軍はただ闇雲に軍事費を増やし装備を近代化しているのではない。むしろ、中長期的国益の観点から、しっかりとした理論武装を行ったうえで、具体的目的を念頭に必要な軍備増強を粛々と進めていると見るべきだ。
実に立派なアプローチであり、日本も見習うべき点が多いと思うが、残念ながら、中国海軍の唱えるこの「和諧海洋」が米国の求める「海洋の自由」と調和することは恐らくないだろう。
旧日本軍との類似点?
以上、長々と人民解放軍の「新たな歴史的使命」について述べたのには理由がある。日本の昭和史にもこれと似たような発想があったことを、ふと思い出したからだ。
北一輝の「日本改造法案大綱」(1923年)などはその典型例である。
「大綱」の中で北一輝は「在郷軍人団ヲモッテ国家改造中ノ秩序ヲ維持」し、「大日本帝国ノ世界的使命ヲ全ウスル」などと記し、国家社会主義的な立場から、軍人を中心に、国内変革とアジア解放を実現する日本の世界史的、文明史的使命について熱く語っている。
なぜ当時の若い将校は北一輝の思想に惹かれていったのか。
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