領土を越えて役割を拡大する解放軍
中国の最新鋭国産戦闘機「殲」〔AFPBB News〕
これだけでは何のことか分かりにくいだろう。もう少し筆者なりの注釈を加えてみたい。
●「国際安全保障環境の再評価」とは、中国の国家利益が既に伝統的な領土、領海、領空の範囲を超え、海洋、宇宙空間、電磁空間にまで拡大していることを踏まえたものだ。
●「国家安全保障の定義拡大」とは、人民解放軍が国境だけでなく、国家利益の境界をも守ること、すなわち、国家安全の利益だけでなく、国家発展の利益をも守るということだ。
●「党の目的に沿った軍の任務再編」とは、中国内外の困難な状況の下で、共産党の指導的地位強化のため、人民解放軍がその役割を拡大するということだ。
●「国防力と経済成長の調整」とは、改革開放政策の下で軍備拡張よりも経済成長による国家再建を優先した鄧小平以来の方針を転換し、今後は経済成長のため、自国の領域を越えた、より大きな役割を解放軍に認めることだ。
要するに、人民解放軍は2004年に、本格的な軍備拡張を通じて共産党や国家の利益を拡大する役割を担うことを正当化する「新たな歴史的任務」につき胡錦濤政権から「お墨付き」を得たということである。
中国経済が拡大するにつれ、成長に必要な資源・エネルギーの確保や成長に有利な国際安全保障環境の確立は中国共産党にとって喫緊の課題となった。今後はこの分野でも人民解放軍が政治的影響力を拡大することは間違いないだろう。
ちなみに、従来米国防総省の対議会報告書は、人民解放軍の「物理的能力」に焦点を当てた記述が多かったのだが、今回はNSCからの指示もあり、意図的に報告書の書き方を変えていると聞いた。
オバマ政権上層部が中国の「戦略概念の変化」の重要性に注目し始めたとすれば、実に結構なことである。日本の偉い人々の一部には、「米国が注目しない限り、注目しない」という、とんでもない悪癖があるからだ。
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