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【スポーツ】穴井ついに世界王者 日本勢歴代金100個に王手2010年9月10日 紙面から
男子100キロ級で新エースの穴井隆将=天理大職=が日本勢98人目の世界王者に輝いた。さらに女子78キロ超級を杉本が制し、日本の歴代通算100金メダルに王手がかかった。穴井は決勝でフロルに優勢勝ち。穴井にとっては前回2009年ロッテルダム大会の銅に次ぐ2大会連続メダルとなった。 自身が、そして日本が待ちわびた、2年越しの金メダルを告げるブザーが鳴る。何度も腕を突き上げ、喜びを爆発させる穴井。「とりあえず結果が欲しかった」。日本のエースに何より必要な世界王者という称号をやっと手に入れた。 前回大会も優勝候補の筆頭と目されたが、精神面のもろさを露呈し準決勝で敗退。男子は史上初めて金メダルゼロに終わり「どう見ても自分の責任。あそこで監督を救えたらと思った。その悔しさを持ち続けている」と責任を一身に背負い込んだ。しかし、そのプレッシャーが裏目に出る。連覇を狙った全日本を落とし、国際大会も敗れた。7月のベラルーシ合宿では「代表を降ろしてください」と篠原監督に直訴しようかというところまで追い詰められた。 それでも先輩であり恩師でもある篠原監督は厳しく、そして温かく励ましてきた。「気にするな。監督に迷惑をかけたとか考えなくていい。自分のために勝て」と檄(げき)。決勝直前には「おまえが一番練習してきた。自信を持ってやれ」と送り出してくれた。これ以上ない恩返しに篠原監督も「ヒヤヒヤしながら見たけど最高」と目を細めた。 もう一つ、穴井には頑張らなければいけない理由があった。8月に待望の第一子となる長男が誕生。だが対面はあえて直後のみにし、柔道漬けの日々を送った。「自分のために勝つ」と言い続ける一方で「弱い父親は見せられない。強い父親になろう」と奮い立たせてきた。 豪快な一本があれば、指導による際どい優勢勝ちもあった。それでも日本のエースとして、父親として手に入れた最高の結果。「オリンピックまでいろいろ大会がある。一つ一つ勝っていきたい」。ロンドンへ、大器がようやくその真価を発揮した。 (川村庸介)
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