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きょうの社説 2010年9月11日
◎日本海側拠点港 金沢港の戦略見直すとき
国が新たに設ける「日本海側拠点港」の選定へ向け、県は作業部会を設置し、準備を本
格化させることになった。国土交通省は拠点港の数や選定基準をまだ詰めていないが、アジアのハブ港を目指す「国際コンテナ戦略港湾」が京浜、阪神の2港湾にとどまったことを考えれば、日本海側も絞り込まれる公算が大きい。金沢港は、重要港湾103港から43港が選ばれた「重点港湾」になったばかりである 。重要港湾のグループでは優位性を強調できても、日本海側でみれば、貨物取扱量で新潟港や伏木富山港に大きく水をあけられている。この2港は、重要港湾より格上の特定重要港湾として機能強化が図られてきた経緯があり、金沢港が名乗りを上げても、選定数が増えなければ選ばれるのは困難かもしれない。 だが、日本海側の他港との比較を通じて、金沢港の優位性や弱点を検証することは、今 後の成長戦略を描くうえでも欠かせない。金沢港ではコマツの工場立地を弾みに輸出量を伸ばし、建設機械や産業機械、自動車部品など輸出品目にも大きな特徴がある。地元の荷主企業が貨物船を共同チャーターする「合い積み輸送」も始まった。そうした独自の動きを軌道に乗せ、定着させる必要がある。 新潟、富山県は既に拠点港へ向けた将来ビジョンを策定し、国の議論を待たずに選定を リードする構えもみせている。金沢港にどんな発展可能性があるのか、日本海側拠点港をめぐる国の動きをとらえ、将来像を明確に描くときである。 日本の輸出入貨物は太平洋側の巨大港湾に集中し、日本海側の取扱量は1割程度である 。対岸諸国との貿易で輸送コストを抑えて時間も短縮できる日本海側を重視しようとする国の方向性は理解できる。日本海側の港がすべて「北東アジアとの玄関口」を主張し、同じような特徴を備えるよりは機能を明確にする方が効率的だろう。 ただ、日本海側の港は太平洋側以上に地域経済と密接に結びついている。港湾整備にメ リハリを付けるとしても太平洋側と同じ発想では困る。国の港湾戦略で日本海側をどのように位置づけるのか、国はビジョンを示してほしい。
◎振興銀が破綻 創業理念、変質の果てに
日本振興銀行が自主再建を断念し、破綻処理を金融庁に申請した。大手銀行に相手にさ
れない中小零細企業を元気にするという創業時の経営理念は、ビジネスモデルの崩壊とともに大きく変質し、「サラ金銀行」「法令違反のデパート」とやゆされるまでになった。金融庁の検査妨害事件で、創業者の一人である前会長らが逮捕・起訴されたことで、破綻は時間の問題だったといえる。政府と預金保険機構は、破綻処理に際して、預金の払い戻し保証額を元本1000万円 とその利子までに限定する「ペイオフ」を初めて発動した。特殊な業態の銀行で、破綻理由も明らかなため、日本の金融システムが揺らぐ心配はなかろうが、政府・日銀は同機構の資金繰りなどに全面的に協力し、不安の芽を摘み取ってほしい。 日本振興銀行は、不良債権処理に苦しむ大手銀行による「貸し渋り」や「貸しはがし」 が問題化していた2004年、中小企業や新興企業に、金利はやや高くても原則無担保で資金を貸すビジネスモデルを掲げて創業した。しかし、直後から不良債権処理が急速に進み、銀行が中小企業への融資を活発化させたこともあって、業績は思うように伸びなかった。収益を確保するため、なりふり構わず貸金業者から高額の手数料を取って債権を買い取り、約1か月後に買い戻させる怪しげな取引に手を染めるようになった。 債権売買に見せかけた取引の手数料を金利に置き換えると、年利換算で46%に及ぶ。 サラ金銀行と呼ばれたゆえんだが、濡れ手に粟の商売が続くわけがない。金融庁の立ち入り検査に際しては、業務内容を隠す目的でサーバー内の電子メールを削除して検査を妨害し、前会長らが逮捕された。 年利7〜15%で中小零細企業に無担保で融資する「ミドルリスク・ミドルリターン」 のビジネスモデルは、なぜ成功しなかったのか。日本の金融機関は、振興銀を反面教師とし、バングラデシュの農村で女性たちに無担保融資を続け、創業者がノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行から学ぶことが数多くあるのではないか。
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