大勢の登山者でにぎわった今夏の北ア槍ケ岳山頂=8月4日午前11時 |
日清食品が8月初め、一部の登山者を足止めし、北アルプス槍ケ岳(3180メートル)山頂でテレビコマーシャルの撮影をしていたことが9日、分かった。抗議や批判が相次いだため、同社はホームページに「不快な思いをさせ迷惑をかけた」とするおわびを掲載し、同日から予定していたこのCMの放送を中止した。
同社広報部によると、8月3日午前11時ごろから約30分間、山頂にちゃぶ台を置いて男性タレントがカップめん「日清ラ王」を食べるCMをヘリコプターから撮影した。ヘリが飛んで危険なため、山頂へ向かう高さ約100メートルの岩壁の途中で、広告代理店スタッフが山頂に向かう登山者十数人に「できればここで待ってほしい」と依頼。強制ではなく、撮影中に山頂に立った登山者もいたとしている。
同社は撮影前に環境省松本自然環境事務所(松本市)に撮影内容を伝え、地元の登山ガイドと相談して登山者が少ない時間帯を選んだとする。だが、同事務所は撮影前に登山者の迷惑にならないよう注意を促していたとして、撮影を問題視。担当者から詳しい事情を聴き、「文書での注意処分などを含め対応を検討している」としている。
岩壁の途中で待機させられたという兵庫県内の男性(67)は「待っているうちにガスが上がってきた。山頂に着いたころには思い通りの景色が見られなかった」と憤る。この男性の新聞投書をきっかけに、日清食品への抗議電話やインターネット掲示板などへの批判の書き込みが相次いだ。