2010年9月10日11時20分
原口一博総務相は10日、観光や送迎に使われる貸し切りバスの事業者の半数以上で法令違反があり、旅行会社が運賃を値切るなどして違反を助長しているとして、安全確保の徹底や旅行会社への指導を強化するよう、前原誠司国土交通相に勧告した。
総務省行政評価局が2008年から国交省地方運輸局やバス事業者などを調査したところ、バス事業者84社のうち44社で運転手の超過勤務や営業区域外での運送などの法令違反が発覚。運転手の1日の拘束時間が法定の16時間を5時間40分も上回る事例もあった。違反を繰り返す事業者もあり、06年からの4年間で行政処分を受けた530社のうち50社が車両使用停止などの処分を2回以上受けていた。
また、84社のうち76社が国に届け出た運賃を旅行会社に値切られていたことも分かった。大手旅行会社が独自に運賃表を作り、閑散期は国が定める運賃の28%に設定したケースも。運賃値切りは運転手の給与や車両整備費の削減につながり、安全運行を脅かす要因になっているという。
こうした実態を地方運輸局の大半が把握しておらず、法令違反をした悪質な事業者に対する刑事告発もしていなかったことから、総務省は金銭的な制裁措置として課徴金の導入を検討するよう求めた。
原口氏は10日の閣議後の記者会見で「零細バス事業会社が無理な運行を強いられ、多くの人命を危険にさらしていた。法令違反が後を絶たない中、指導監督の仕組みが必ずしも機能していない」と述べた。
貸し切りバスは00年の道路運送法改正で参入が免許制から許可制に緩和されて以降、事業者数が急増して競争が激化。大阪府吹田市で07年2月にスキー客ら27人が死傷するバス事故が起き、無理な運行体制が社会問題となった。