2010年9月10日11時31分
食後に水風呂でくつろいでいるコウコウ。「おっさんパンダやぁー」と幼稚園児に指をさされていた=今年6月、神戸市灘区の市立王子動物園、日比野写す
神戸市立王子動物園(神戸市灘区)が中国から借り受けていた14歳のオスのジャイアントパンダ、コウコウ(興興)が9日、死んだ。人工授精のために精子採取を試みた後、麻酔から覚める途中で心肺停止したという。繁殖目的で8年前に来日。2008年に待望の赤ちゃんが生まれたが4日目に死に、その後は子宝に恵まれなかった。
同園によると、14歳のメスのタンタン(旦旦)に発情の兆候が見られたため、この日午前9時すぎからコウコウに麻酔をかけて精子採取を試みたが失敗。午前11時半ごろ、呼吸が浅くなり、心臓マッサージなどをしたが正午に死を確認したという。死と麻酔の因果関係は不明で、中国から専門家が到着するのを待って病理解剖する。
同園は繁殖研究目的で00年7月にタンタンを、02年12月にコウコウを中国から借り受けた。公募で決まった名前「興興」には1995年の阪神大震災からの復興への願いが込められた。
気の強いタンタンと、おっとりした「草食系男子」(同園)のコウコウは相性が悪く、交尾による繁殖が望めないため、03年から人工授精に切り替えていた。
2頭は今年7月に借受期間を5年間延長したばかりだった。人為的な原因で死んだ場合は賠償金50万米ドル(約4200万円)の支払いを求められる可能性もあるという。パンダプロジェクトチームのリーダーとして2頭を見守り、2世を待ち望んできた副園長の奥乃弘一郎さん(58)は「気難しいタンタンを包み込むような、優しい性格のパンダだった。残念としか言いようがない」と肩を落とした。同園は10日に献花台を設けた。(日比野容子)