無罪主張する押尾被告に次から次へと不利な証言…

公判を終え、東京地裁を出る押尾被告を乗せたと思われる車 Photo By スポニチ

　合成麻薬ＭＤＭＡを一緒にのんだ女性を救命せず死亡させたとして、保護責任者遺棄致死罪などに問われた元俳優押尾学被告（３２）の裁判員裁判の第４回公判が９日、東京地裁で開かれた。救命の可能性を争う大きなヤマ場で、救急隊員が証人出廷。１１９番から２０分以内で病院へ搬送できた可能性が強いことを証言した。また女性が容体急変から約３０分後まで生きていたとする新証言も出て、押尾被告はさらに追い込まれた。

　またしても押尾被告の旗色が悪くなった。

　事件は昨年８月２日、東京・六本木ヒルズのマンションで発生。ここに一番近い麻布消防署の隊員だった男性は、出動指令から現場に到着し、最寄りの日赤医療センターに搬送するまでの所要時間を詳細に説明した。

　「出動指令から出動まで経験上、１分。マンションまで２、３分」と具体的な数字で証言。通報から病院搬送まで、スムーズにいけば２０分以内で完了した可能性があることを示した。また、別の救急隊員も「東京２３区内ならばどこからでも１１９番通報から３０分以内で搬送できる」と強調。「搬送までに４０分かかり、救命可能性は低かった」とする弁護側の主張とは異なる内容となった。

　死亡した飲食店従業員田中香織さん＝当時（３０）＝は同日午後５時５０分、歯を食いしばるなどＭＤＭＡ中毒症状が出始めた。容体が急変したのは同６時ごろ。押尾被告は捜査段階で田中さんの死亡時間を同６時２０分ごろとしており、中毒症状が出始めた段階で通報すれば、死亡する前に救命救急センターに搬送できた可能性が十分にあることになる。

　一方、押尾被告の知人男性Ａ氏が出廷し、田中さんが容体急変から３０分以上たって生きていた可能性を指摘した。

　Ａ氏は事件発生後、押尾被告が誰よりも早く連絡を取った人物で、携帯電話に着信があったのは同６時３２分。この３分後に押尾被告に電話をすると「シャワーから出てきたら女性の意識がなく倒れている。ヒルズに今すぐ来られないか」と言われた。検察官から「死んだという言葉はなかったか？」と問われると「なかったと思う。意識がないと言って緊迫した状況だった」と回答。田中さんの死亡が知らされたのは同７時４８分の電話だったという。

　この証言通りならば「２０分以内」「２３区どこでも３０分以内」で病院搬送が可能だとする救急隊員の証言と合わせて、田中さんは十分、救命ができたことになる。裁判員たちもこれまでの公判以上にメモを取りながら質問していた。

[ 2010年09月10日 ]