2010年9月10日 8時42分 更新:9月10日 11時44分
経営再建中の日本振興銀行(東京都千代田区)は10日、10年9月中間決算で約1700億円の大幅な債務超過に陥る見通しとなったため、金融庁に預金保険法に基づく破綻(はたん)申請をした。同日中に東京地裁に民事再生法適用を申請する。これを受け、金融庁は振興銀の破綻を認定、預金者保護のため10~12日まで3日間の業務停止命令を出し、破綻処理手続きに入った。預金者1人当たりの預金1000万円とその利息までを保護する「ペイオフ」を事実上初めて発動する方針で、保護される範囲を超える部分は一部カットされる可能性が高い。
振興銀は04年、日銀出身で金融庁顧問も務めた木村剛被告が中心となって開業した。中小企業向け融資に特化したビジネスモデルを目指したが、金融庁は09年6月から異例の9カ月に及ぶ検査を実施。今年6月、金融庁検査を妨害した銀行法違反(検査忌避)の疑いで刑事告発し、木村被告や前社長ら経営陣が逮捕されるなど経営が混乱。社外取締役で作家の江上剛(本名・小畠晴喜)氏が急きょ後任社長に就任し、国内外の金融機関や投資ファンドなどとの資本提携を模索していた。
しかし、旧経営陣の下で行われた親密先企業への不透明な融資などに対する貸し倒れ引当金を積み増す必要に迫られ、9月末で1700億円程度の債務超過に陥る見通しとなったため、自力再建を断念した。
ペイオフの発動は71年の預金保険制度創設後、事実上初めてとなる。振興銀は通常の銀行と異なり、定期預金だけを扱い決済業務を行っていないため、金融庁や預金保険機構は金融システムへの影響はほとんどないと判断。ペイオフ発動に踏み切ることにした。
振興銀の6月末時点の預金残高は6101億円。1000万円を超える預金者は約4800人。ペイオフで保護される1000万円とその利息を超える部分は、民事再生手続きに従いカット率を決めた上で返済されるが、振興銀は債務超過のため全額返済は困難とみられる。ただ、振興銀では1000万円を超える預金者は3~4%程度で、大半の預金者は影響を受けない見通しだ。【清水憲司】
【ことば】日本振興銀行 大手行の貸し渋りを受けていた中小企業を支援する理念を掲げて、木村剛被告が東京青年会議所の有志らと開業。だが、経営陣の内紛など混乱が続き、不良債権の増加などで10年3月期連結決算は最終(当期)損益が51億円の赤字に転落して、木村被告は会長を引責辞任した。全国に114店舗を展開している。