日本振興銀行の経営破綻は、預金などの払戻保証額を元本1千万円とその利息までとする「ペイオフ」を発動する初めての事例となる。同行は決済機能を持たない特殊な経営モデルを採用しており、金融庁はペイオフに踏み切っても金融システム全体に与える影響は極めて小さいと判断したもようだ。
金融庁が振興銀に対してペイオフの発動を決めた大きな理由の一つに、同行の特殊なビジネスモデルがある。
振興銀の預金はすべてが1カ月物~10年物の定期預金。定期預金の預け入れや払い戻しは郵送やインターネットで申し込んだうえで、他行の口座を通じて資金をやりとりする仕組みだ。本支店の窓口では現金を原則として取り扱っておらず、キャッシュカードもない。
給与の受け取りや公共料金の支払いなど、日々の暮らしの資金決済に使う普通預金や当座預金は取り扱っていない。振興銀はその理由として「高いコストがかかる資金決済口座を持たないことで、預金者に有利な金利を提供できる」と説明。実際、預金者の大半は他行よりも高めの金利を目当てにした余資運用が目的とみられる。
また振興銀自体も他の金融機関との資金のやり取りは少ない。短期金融市場で資金を借り入れる際にも国債を担保として差し入れており、破綻しても他の金融機関に連鎖するおそれはないとみられる。
公的資金投入の道も閉ざされていた。2003年11月に経営破綻した足利銀行の場合、金融庁は公的資金の投入を規定した預金保険法102条を発動して同行を一時国有化し、本来なら一部カットの対象となるはずだった定期預金を含めて預金を全額保護した。同行は約4割のシェアを占める栃木県内最大の金融機関で、破綻処理すれば「地域の経済への影響が極めて大きい」と判断したためだ。
だが振興銀は決済機能がないうえ、資産規模が6千億円程度と比較的小さいこともあり、「信用秩序に影響を及ぼすおそれがある」とする預金保険法102条の発動要件を満たさない。地域金融機関の資本増強を公的資金で支援する金融機能強化法も、債務超過でないことが前提。金融庁は「振興銀が破綻しても公的資金投入は法律上不可能」との判断に傾いた。
振興銀から融資を受けている企業には影響が及ぶ可能性がある。預金保険機構の管理下に入ったあとも、債務の返済状況が安定し回収が確実な「善良かつ健全な貸し手」は引き続き融資を受けられる。ただ短期の運転資金が中心で、これまで借り入れていた額が上限。同行から借り入れを増やすのは難しくなる。
ペイオフ、利息、金融システム、経営破綻、キャッシュカード、ビジネスモデル
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