私が彼に「田中角栄の後継者と言われているが、政治手法はどう違うのか」と質問したら、「オヤジ(田中)も金丸さんも竹下さんも、足して2で割る名人だったが、それではもう限界だと思ったのが私の原点だ」と答えた。
「55年体制では社会党も含めて実質的に全会一致だった。ああいういい時代にはそれでよかったし、そもそも政治なんかなくてもよかったのだ」と小沢氏は笑った。
彼の強引な政治手法の背景には、このように既得権を守って現状維持をずるずると続ける政治への嫌悪がある。
小沢氏に期待する「過剰なコンセンサス」の破壊
日本の首相は、主要国ではイギリスに次いで法的な権限が強い。それが指導力を発揮できない原因は、この過剰なコンセンサスである。経済が順調に成長していた時代にはそれでもよかったが、今はそうはいかない。強い指導者が大きな決断をして、責任も彼が負うしかない。
特に衆参の「ねじれ」によって、国会審議は難航が予想される。部分連合は極めて困難で、党内基盤の弱い菅首相では、安倍晋三首相や福田康夫首相のように行き詰まる可能性が強い。大連立や解散による政界再編は避けられないだろう。それができるのは、小沢氏しかいない。
「3カ月で首相が代わるのは世界に恥ずかしい」というのは逆だ。政治が不安定なのは、民主・自民両党にそれぞれ古い政治と新しい政治が混在しているからで、政党を政策に沿って再編しないと不安定性は解決しない。
小沢氏の政治手法は古いが、古いなりに一貫している。彼が20年前に感じた「2で割る政治では駄目だ」という限界は、いまだに日本の政治の本質的な問題である。
日本の政治を揺さぶり続けてきた彼の総仕上げとして、一度は首相になって、馴れ合い政治の「壊し屋」として力を発揮してもらってはどうだろうか。
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