ネットで盛り上がる「小沢ブーム」は危険な兆候か

大手メディアとネットで分かれる小沢支持率

2010.09.08(Wed) 池田 信夫

日本経済の幻想と真実

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 それに対して、ニコニコ動画などで直接、小沢氏の話を聞いた若い世代は彼に好意的だ。こっちではバランスを取る必要がないので、彼の独裁的な政治手法や政治資金にまつわる話よりも、彼の政治信念とか人柄の話をすると、意志が強く指導力のありそうな小沢氏に好感を持つ視聴者が多いのだろう。

 若い世代は、あまり政治とカネについての関心は強くない。田中角栄のような大規模な贈収賄とは違い、小沢氏の問題は政治資金団体の虚偽記載にすぎない。もちろん違法行為に問題がないとは言えないが、首相としての能力とは別に考えた方がいいだろう。

 小沢氏が支持を集める背景には、鳩山・菅内閣で続いてきた政策があまりにも無策で、経済もまったく改善していないという不満がある。

 菅氏がプラス・マイナス10点ぐらいだとすれば、小沢氏はプラスもマイナスも100点ぐらい取りそうだから、ハイリスクの「賭け」に出ているのだろう。

 こういう傾向を「危険だ」と言う人がいる。若い世代は小沢氏の恐さを知らないで選挙向けの温和な顔だけを見ているとか、日本経済が行き詰まってヒトラーのような「強い指導者」を求め始めたのではないか、といった批判もある。

「足して2で割る政治は限界だ」

 しかしニコニコ動画で小沢氏にインタビューした私の印象では、こういう支持も批判も当たっていないと思う。小沢氏は古い政治家で、特に経済政策には疎く、若い世代が望むような画期的な政策転換はしそうにない。

 『日本改造計画』の頃の自己責任論について質問したら、彼は「まったく変わっていない」と強調したが、現実の政策として掲げているのは子ども手当の満額実施などのバラマキ福祉だ。

 他方で、彼がヒトラーのような独裁者になる可能性もない。90年代から彼が繰り返し試みた政界再編は、ほとんどが失敗に終わり、彼の自民党や霞が関の人脈はかなり高齢化している。

 民主党内で多数派を形成している最大のグループも「小沢チルドレン」の1年生議員で、もう彼の号令で政治を一挙に動かすような力はない。

 仮に彼が首相になっても、民主党の迷走する政策がそれほど大きく変わるとは思えないが、それでも小沢氏に期待できる唯一のポイントは、彼が今の停滞した政治状況を打開できる政治力を持っているからだ。

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