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きょうの社説 2010年9月10日
◎エコカー補助金終了 景気の落ち込みが心配だ
省エネ性能に優れた車の購入を促す「エコカー補助金制度」が駆け込み需要の急増で、
予定より大幅に早く打ち切られた。8月の新車販売は需要の先食いによって、前年同月比で46・7%も増えたという。各自動車メーカーは今後、国内の販売台数が2〜3割落ち込むと見ており、新車の投入 や減産で対処する考えだが、急激な円高で業績の見通しが立たず、日本経済全体への影響が懸念される。 政府は追加経済対策の一環として今年末をもって終了予定だった家電エコポイント制度 の延長を決めたが、エコカー補助金については再延長しなかった。自動車産業のすそ野は広く、日本の全就業人口の7・9%にあたる507万人が自動車関連業界で働いており、景気を下支えする効果は家電の比ではない。 時限措置として実施されてきた以上、制度が終わった後のマーケットの落ち込みは予想 されていたこととはいえ、円高・株安の最悪のタイミングで、最も有効だった景気刺激策を今ここで失うのは痛い。直嶋正行経済産業相は、エコカーの普及促進に向け、企業の設備投資支援策を盛り込む考えを示したが、打ち切りの反動は相当大きいとみるべきだろう。家電エコポイントと同じように、補助対象をより省エネ性能の高い車種に絞り込むなどして、再延長してもよかったのではないか。 政府は2010年度予算の予備費の残り9200億円を財源とする追加経済対策を策定 中である。ここに盛り込む規制改革分野の施策として、老朽化した建物を建て替える際の容積率緩和や医療滞在ビザ(査証)の創設など約100項目を検討しているが、いかにも小粒な印象で、景気対策としては物足りない。 民主党代表選に出馬している小沢一郎前幹事長は、政府の経済対策について、「2兆円 の予備費のうち、菅内閣はその半分を支出したいと言っている。小出し小出しでは景気回復に大きな影響を与えることはできない。なぜ2兆円すぐ実行しないのか」と菅首相の対応を批判している。エコカー補助金に代わる即効性のある景気対策が今こそ必要である。
◎滞納住民税の徴収 共同化の仕組み研究を
石川、富山両県は県の直接徴収や市町村との共同徴収によって、滞納されている個人住
民税の収入率引き上げに力を入れている。個人住民税の徴収は原則として、県分(個人県民税)を含めて市町村の業務となっており、県がじかに徴収に乗り出すのは本来、特例的な措置であるが、このところ県の直接徴収は常態化している。県の直接徴収や市町村との共同徴収を今後も恒常的に行う必要があるとすれば、滞納住民税を県・市町村一体で徴収する仕組みや体制について検討、工夫が加えられてよいだろう。県・市町村が共同で個人住民税の滞納案件を処理する組織として「地方税滞納整理機構 」を設立する県が相次いでいる。その数は既に20ほどに上っており、各県の取り組みについて、一歩踏み込んだ研究を進めてもらいたい。 国税の所得税を減らして地方税の個人住民税を増やす形で税源移譲が図られた結果、個 人住民税の滞納額も増えたことが自治体の課題になっている。このため石川県は、市町で徴収できない案件の直接徴収を2005年度から始め、今年度は10市町の滞納案件を引き受ける予定である。富山県は09年度に3市町村で直接徴収、2市で共同徴収を行ったが、今年度は全市町村に対して直接ないし共同徴収の協力を求めている。 こうした県・市町村の協力をさらに進めたのが地方税滞納整理機構で、最近では09年 度の福井県や宮城県などに続き、今年度は鳥取県が設立し、悪質な滞納者の財産の差し押さえ、公売などにも本腰を入れている。市町村職員にとって身近な人物の滞納処分は心理的に抵抗があり、経験もノウハウも不十分なため、県と一体の整理機構での実施が効果的という。 各県の整理機構は地方自治法に基づく一部事務組合や広域連合、任意の組織と性格に違 いがあり、その中には設置期限を区切るところや、将来の税務一元化をも視野に入れて取り組むところもある。石川、富山両県も、それぞれの地域事情や中長期的な視点も加味して、個人住民税の滞納整理の在り方を検討してもらいたい。
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