きょうのコラム「時鐘」 2010年9月10日

 それでも身の潔白を訴える鈴木宗男議員の記事を読んで、おや、と思った。会見で「わいろをいただいた認識はない」と弁明した。「いただいた」は、ヘンである

わいろは、もらう・受け取る、で十分である。敬語まで使われては、わいろがビックリする。丁寧な物言いを心掛けたのだろうが、悪い見本。わいろを敬うような風潮があるのか、とゲスは勘繰ってしまう

黒い金は別にして、金を敬うのは美徳だが、モノにはおのずと限度がある。加賀三代藩主、前田利常の誇り高い逸話を聞いたことがある。江戸城に札が立った。「小便禁止。違反者は黄金一枚の罰金」。立て札に向かって、利常は平然と用を足した

幕府の警戒の目をそらすため、鼻毛を伸ばして愚者を装ったという人である。バカ殿の仕業、と周囲はあざ笑ったが、利常は側近にこう言った。「大名たるもの、一枚の金惜しさに小便を我慢できようか」

ムネオ疑惑は決着し、政治とカネはこれで卒業、という声が聞かれる。聞きたいのは、マユツバものの卒業宣言ではなく、カネよりも名や誇りを惜しむ志なのだが、まだまだ無理な注文か。