大型商業施設「アピタ」が撤退し、テナント誘致を進めるプリオ。渡り廊下でつながれた右の建物がプリオ2=豊川市諏訪で
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豊川市中心街にある再開発ビル「プリオ」から大型商業施設「アピタ」が撤退し、ビルを管理する第三セクター「豊川市開発ビル」は後に入る店舗の誘致に四苦八苦している。アピタが抜けた穴を埋められなければ経営悪化は必至。投入した巨額の税金が焦げ付く恐れもあり、市議会側からは「市はビル経営から手を引くべきだ」との声も上がる。
「民間に引き受け手があるとは考えられない。道義的責任もあり、市が手を引くことは許されない」。竹本幸夫副市長は4日の市議会側との協議で、アピタ撤退に伴う市の支援策として、9月補正予算案にフロアや駐車場の改装費計1億7500万円を盛り込むことに理解を求めた。
「道義的責任」で副市長の念頭にあったのは豊川信用金庫からの融資だ。ビル建設費として同信金から22億円を借りており「市を信用して融資してくれた信金に迷惑を掛けられない」というわけだ。当然、「事業を継続できれば、いずれ借金は返済できる」との思いもある。
これに対し、議会側からはビル事業の収益悪化を踏まえ「割れたコップに水は入れられない」との声が上がった。市議らは「さらにテナント誘致を進め、併せて経営強化策も明示するように」と求め、判断を保留した。
開発ビルは信金からの融資に加え、テナントから預かっている保証金と敷金合わせて11億円もビルの建設費に充てている。初期投資による負債は計33億円に上る。
一方、ピーク時に2億8000万円あった開発ビルの経常利益は、バブル崩壊による賃料収入の悪化などで、ここ3年ほどは1000万円程度にまで激減。保証金の返済のため、新たに信金から融資を受けるという自転車操業状態に陥っている。
そこに、店舗面積9000平方メートルのアピタの撤退が追い打ちを掛けた。空き床の一部は、食品スーパーや知育アミューズメント施設などで埋まったが、5300平方メートルは空いたまま。これが埋まらなければ赤字転落は確実で、毎年1億円余を返済してきた負債も逆に膨らむことになる。
開発ビルは今年7月、「苦渋の選択」としてパチンコ店と契約を結ぼうとしたが、議会側から「三セクのビルには好ましくない」との異論が噴出、断念した経緯がある。
市が補正予算案を提出する9月6日までに、テナント誘致をどこまで進められるか−。開発ビル支援問題は一つのヤマ場を迎えるが、市議らの間には「もともと営利目的のビル経営は市の事業になじまない。今すぐは無理でもいずれ市は手を引くべきだ」と冷めた声も聞かれる。
豊川市開発ビル 市と地元商店街、豊川商工会議所、豊川信用金庫、ひまわり農協などの出資で1988(昭和63)年に設立。資本金7800万円のうち4000万円を市が出資し、山脇実市長が社長を務める。豊川市諏訪の5階建てビル「プリオ」と隣接する4階建ての「プリオ2」の計約2万6000平方メートルを管理し、賃料収入などの売上高は6億6000万円。
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