抗生物質のほとんど効かない細菌「多剤耐性アシネトバクター」による院内感染の問題で、東京の帝京大学附属病院と愛知県の藤田保健衛生大学病院ではいずれも最初に感染した可能性の高い患者は海外への渡航歴がなかったことがわかり、専門家は「この耐性菌はすでに国内で広まっているおそれがある」と指摘しています。
この問題は、抗生物質のほとんど効かない細菌「多剤耐性アシネトバクター」による院内感染で、東京の帝京大学附属病院でがんなどの入院患者9人が死亡した疑いがあるほか、愛知県の藤田保健衛生大学病院でも24人が感染したとみられるものです。2つの病院によりますと、細菌が検出された患者のうち最初に感染した可能性が高い患者は、いずれも家族からの聴き取りなどから海外への渡航歴がないことがわかったということです。「多剤耐性アシネトバクタ-」については、これまで国内の複数の病院が、患者からの検出を公表していますが、いずれも韓国やアメリカの病院から転院してきた患者によって持ち込まれたものとみられていました。感染症に詳しい順天堂大学の堀賢准教授は「この耐性菌はすでに国内で広まっているおそれがある。医療機関では、感染が疑われる患者は個室に移すなど院内感染対策を徹底するとともに耐性菌の監視体制をいっそう強化する必要がある」と指摘しています。