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【芸能・社会】

押尾被告「一生面倒見るから」 元マネージャーに第一発見者偽装案

2010年9月7日 紙面から

 「あれ、いる?」の「あれ」は、セックスの時に使う薬だと思った、「お前のことを一生面倒見るから」と言われた−。合成MDMAを一緒にのんで死亡した飲食店従業員田中香織さん=当時(30)=を救命できなかったとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われ、無罪を主張している元俳優押尾学被告(32)の裁判員裁判の第2回公判が6日、東京地裁(山口裕之裁判長)であり、検察側証人として出廷した元交際相手の女性や元マネジャーら6人から、生々しい証言が相次いだ。時折、動揺も見せた押尾被告。公判は7日も開かれる。

 押尾被告は3日の初公判同様、白髪交じりのロン毛で、黒いスーツ、青のネクタイ姿。険しい表情で机にノートを広げ、時おりボールペンでメモを取っていた。

 2人目の証人Kさんによるビデオリンク式の証言で、「あれ」「いる」の意味をめぐるやりとりになると、落ち着かない様子で弁護人と顔を寄せ合い、ひそひそと相談。Kさんが薬物を飲んだ経緯について「押尾さんに勧められて」と答えると、不満を感じたのか、急いでノートに書いた内容を弁護人に見せていた。3人目のEさんが、米国からクスリを持ち帰るよう頼まれ、「入ってもすぐに出してあげる」と言われた、と証言すると、否定するように首を横に大きく振ってみせた。

 4人目のIさんの証言中は、Iさんをじっと見つめる場面も。証言が終わるとホッとしたのか、小さくため息をついた。5人目の元チーフマネジャーが、押尾被告の発言について「残念に感じた」と証言すると、メモを取る手がピタリと止まった。

 生々しい薬物やセックスをめぐる証言にもあまり表情を崩さず、閉廷時は山口裕之裁判長に向かって深々としたお辞儀をした。

     ◇

 「お前のことを一生面倒見るから−」。6人目の証人、押尾被告の元マネジャーの男性は、押尾被告から身代わりを頼まれたことを明かした。元マネジャーは田中さんの携帯電話を捨てたとして証拠隠滅罪で東京地検に略式起訴され、昨年12月に東京簡裁から罰金20万円の略式命令を受けた。

 事件当日の昨年8月2日夜、押尾被告から六本木ヒルズの現場に呼び出され、女性の遺体を見た。「今までに見たことのない、懇願するような目で私の目を見て、『お前のことを一生面倒見るから、第一発見者として名乗り出てくれないか』と言われました」

 まず押尾被告の身を案じ、「押尾さんは今後の芸能活動が困難になるので、そう言ったのだろうと思いました」

 その後駆け付けた元チーフマネジャーが救急車を呼ぶよう呼び掛けても「押尾さんは『だめだ。それはできない。プランBを考えてくれ』と言いました」。結局、最後に呼び出された押尾被告の友人男性が部屋に入るなり「ダメだダメだ」と言って119番通報したと証言。押尾被告は「ダメだ、オレ出るわ」「部屋のことは会社のミーティングルームとか、何とかうまく説明しといてくれ」と言い残し、別の部屋に移動してしまった。

 保身にこだわる押尾被告を見て、元マネジャーは「勘弁してくれよという気持ちと、押尾さんはいなかったことにして話をつけるしかないと思った」。田中さんの携帯電話を植え込みに捨て、救急隊にも警察にも「前日に深酒して、二日酔いの状態で部屋に行ったら見覚えのある女性が来た。私はリビングで横になり、女性は寝室で寝て、夜9時くらいに部屋をのぞいたら亡くなっていた」と、うその説明をし続けたという。

 裁判員から今の心境を聞かれると「今は女性1人が亡くなったことをあまりに軽んじていたと反省している。法廷は真実を話さなければいけない場なので、ありのまますべてを話すべきだと思った」ときっぱり。それでも最後まで押尾被告を見ることはなく、裁判員に「押尾被告に言いたいことは」と聞かれても「特にないです」とだけ答えた。

 

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