鬱陵郡で人口が増え続けるワケ
鬱陵島と独島(日本名:竹島)からなる鬱陵郡は、韓国で最も人口が少ない地方自治体だ。ところが、2005年には9538人だった鬱陵郡の人口は徐々に増え、09年現在、1万325人となった。人口減少に悩む東海岸の近隣自治体とは事情が異なる。
蔚珍郡の人口は、05年には約5万6000人だったが、昨年は約5万2000人に減った。高城郡の人口も、3万1000人から3万200人へと減少した。高城郡では、人口が3万人を下回る危機に直面したことを受け、郡守(郡の首長)が「高城で働いていながらほかの地域に住民票がある公務員は昇進させない」と脅しをかけたこともある。
そんな中、鬱陵郡だけは例外的に人口が増えているが、これには裏事情がある。韓国政府が05年から実施している「内航旅客船運賃補助事業」が生み出した「幽霊世帯」がその理由だ。これは、交通事情が劣悪な島嶼(とうしょ)地域の住民の旅客船運賃を政府が支援する制度で、中央政府と地方自治体が事業予算を折半するというもの。企画財政部は今年、この事業の予算として70億ウォン(約5億円)を策定した。この支援を受けられるのは、島嶼地域に住民票を置く人だけで、鬱陵郡に住民票がある人たちは、陸地に渡る際、片道5000ウォン(約355円)で旅客船を利用することができる。慶尚北道浦項や江原道東海から出ている鬱陵島行き旅客船の運賃が5万-6万ウォン(約3554-4265円)程度という点を考慮すると、そのわずか10分の1というわけだ。
そこで、鬱陵郡で1-2年程度勤務する職業軍人や公共機関の職員、または陸地に居住しているが鬱陵島に事業所を置き、ひんぱんに往来する人たちが、鬱陵島に住民票を移した。旅客船運賃の割引を受けるためだ。その結果、鬱陵島には「一人暮らしの世帯」が急増した。この制度が導入された05年当時、鬱陵郡の世帯構成人数は1世帯平均2.33人だったが、昨年は2.12人に減少した。
こうした状況に鬱陵郡も困り果てている。鬱陵郡は昨年、この事業に30億ウォン(現在のレートで約2億円)の予算を投じた。ところが、陸地から転入してくる人は島で金を使わず、政府の支援を受けて、陸地で金を消費するからだ。そのため、この制度は鬱陵郡の経済にとって何の手助けにもなっていない、という主張が出ている。これについて企画財政部の関係者は、「島民たちの便宜のために設けた制度の恩恵が、とんでもない人に利用されている傾向がある。これは、補助金事業が直面するジレンマだ」と語った。
チョン・ウォンソク朝鮮経済i記者