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きょうの社説 2010年9月9日
◎多言語メニュー 「国際観光立県」目指す一歩
石川県が2014年を目標に取り組む「海外誘客10倍増構想」を実現するには、他県
以上に早いスピードで「地域の国際化」を進める必要がある。県がこれまで掲げてきた「観光立県」は主に国内観光客を対象にしたものだが、その看板を「国際観光立県」に変えるくらいの意識の転換が求められている。その一歩にしたいのが飲食店の多言語メニューである。県は普及を目指し、誰でも簡単 に多言語メニューが作成できるシステムの構築に乗り出した。海外でメニューが分からず、注文に戸惑った人は少なくないだろう。日本政府観光局の調査によると、外国人旅行者が訪日で最も期待するのは「食」であり、グルメは日本観光の大きな魅力になっている。注文時の負担を軽減することは今や、海外誘客の必須メニューといえる。 外国人客を増やすには、歓迎の意を示す地域挙げての取り組みが欠かせない。その点、 多言語メニューは「もてなしの心」を形として伝えられる。料理によっては、食材情報や食べ方の説明もあっていい。これを弾みに、観光施設や土産物店、公共交通機関などでも相手の立場に配慮した多言語化を工夫していきたい。 県は2003年に年間5万人だった外国人宿泊者数を14年に15万人まで増やす目標 を掲げていたが、07年に達成したため10倍増の50万人に引き上げた。県の中長期的な目標のなかでも、とりわけ大胆な数字であり、綿密な誘致戦略と受け入れ態勢の整備は急務である。 県が構築する多言語メニューの作成システムは、インターネット上の専門サイトを利用 し、英語、中国語(繁体字と簡体字)、韓国語のメニューが可能となる。手始めに30店舗程度を協力店として取り組む予定である。店が増えれば紹介マップの作成や店頭の表示ステッカーなども考えたい。 北陸新幹線開業へ向けた行動計画「STEP21」でも、「おもてなしの向上」は重点 プロジェクトになっている。外国人受け入れで、かゆいところに手が届くような細やかなサービスを広げていくことは、国内観光客のもてなしにも重なる大事な取り組みである。
◎中国人船長逮捕 粛々と法治国の対応を
沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海内で、海上保安庁の巡視船に漁船を衝突させたとして
中国人船長が逮捕された事件について、仙谷由人官房長官が「わが国の法令で厳正に対処し、粛々と捜査する」と述べたのは、その通りである。尖閣諸島の領有権を主張する中国政府はこの措置に反発し、北京の日本大使館前では中 国の若者らの抗議行動も起きているが、菅内閣は法治国家として毅然かつ平静に対処してもらいたい。 尖閣諸島周辺の海域では、中国側がガス田開発を進め、日本側の出資割合などに関する 交渉が日中の通商・外交問題として横たわっている。ガス田の共同開発交渉という難題に加えて、中国が世界の生産量の大部分を占めるレアアース(希土類)の輸出規制を強め、その見直しを求める日本との間で新たな摩擦も生まれている。 中国国内の一部には、日本の取り締まりに抵抗して逮捕された船長を英雄視する向きが あり、領土問題が絡んだ反日世論の高まりが今後の通商交渉をさらに難しくする恐れも否定できない。それだけになお、日中両政府は今回の事件を政治問題化させない冷静な対応が必要である。 それにしても、尖閣諸島周辺の東シナ海における最近の中国艦船の挑発・威嚇的な行動 には目に余るものがある。このことに関連して、政府の新安保防衛懇談会が先に提出した報告書の中で、尖閣諸島を含む南西諸島など離島の防衛を強化する必要性を説き、そのためにも従来の「基盤的防衛力」の考え方を改め、自衛隊の対処能力を高めるよう提言したのは重要である。北沢俊美防衛相が南西諸島への自衛隊配備に積極姿勢を見せているのは、防衛の責任者としてもっともといえる。 尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、「尖閣諸島に領土問題はない 」というのが日本の一貫した立場である。日中両国は経済の相互依存が深まり、互いになくてはならぬ存在となっているが、領土に関しては対立、あつれきが生じても節を曲げることがあってはならない。
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