球児、2回無失点!8日にも優勝M

 8回、中日・ブランコを三振に打ち取り、こん身のガッツポーズを見せる藤川(撮影・高部洋祐)
 8回、中日・ブランコを三振に打ち取り、こん身のガッツポーズを見せる藤川(撮影・高部洋祐)

 「阪神1‐0中日」(7日、スカイ)

 これぞ究極の必勝リレーだ!阪神は1点リードの八回、守護神・藤川球児投手(30)を投入。2イニングとも走者こそ出したが得点は許さず、今季初めての1‐0のスコアで、2位・中日を下した。猛打爆発だけが、阪神の勝ち方じゃない。いよいよ、8日にも優勝マジックを点灯させる。

  ◇  ◇

 似ている‐。

 生暖かい風にほおをたたかれながら、球児は感じていた。土の色が違う。構えられたミットの色も違う。しかしそれは確かに、あの日と同じ景色だった。

 1点リードの最終回、2死一、二塁。一打同点のピンチ。こん身の速球をたたいた荒木の打球が、中堅浅井のグラブに収まった。試合終了。躍り上がるようなド派手なガッツポーズが、この一戦に賭(か)けた守護神の気持ちの大きさを物語る。

 この試合はペナントの大きな分岐点になる。このピンチを乗り切れば、優勝できる‐。

 球児は、そう感じていた。

 7回無失点のスタンリッジに代えて、八回から守護神・球児を投入。究極の必勝リレーにスタンドは大きくどよめき、そして沸いた。

 「初球を投げて『あれ?』って思った」

 いつもの姿とは程遠い。荒れる球筋に手を焼きながら安打と四球で1死一、二塁のピンチを背負うと、森野の打球は中堅後方への大飛球。これは逆風に助けられて九死に一生を得たが、続く和田にも四球を与え、2死満塁で5番・ブランコを迎えた。しかし、全球直球の真っ向勝負で重圧を振り払うと、最後はこん身の外角146キロで見逃し三振。ここしかない‐。変調の中で投じた、魂の1球だった。

 07年9月14日。優勝争いのまっただ中で迎えた中日戦で、球児は主砲・ウッズに痛恨の決勝打を浴びた。「ここを抑えれば優勝できる」という直感を頼りに挑んだ炎の直球11連発。「今でも夢に見ることがある。あそこでウッズを抑えてたら優勝できた。今でも思ってる」。幾多の修羅場をくぐっても消えることのない、守護神の悪夢だ。

 「きょうは始まる前から予感があったんでね。ここの試合、こういう試合を(勝てば)という…」

 試合前から「きょうは3イニングぐらい行きます」と首脳陣に伝えていた。あの日とまったく同じ景色の中での熱投。3年前から進化を遂げた守護神が、その結末を真逆の色に変えた。

 「(中継ぎ陣の)プライドもあるしね。競っても大丈夫というのを見せられたら、負ける要素もなくなってくる」

 一戦必勝の構えで臨んだ首位攻防3連戦の第1ラウンド。息詰まる攻防を制し、追いすがる竜との差は1・5ゲームに広がった。残り24戦。胸突き八丁の攻防はまだ続く。しかしこの1勝は大きい。あの日の悪夢を振り払った1勝だからこそ大きい。守護神の躍動がもたらした1勝だからこそ、大きいのだ。

(2010年9月7日)

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