講義メモ:国対政治
昨日はある大学の大学院で「政治権力論」というクラスに
ゲストスピーカーとして呼ばれ、講義しました。
大学院生、それも社会人が多くて、レベルの高いクラスでした。
そこで国会対策委員会について話してくれ、という要望でした。
学生さんは地味なテーマにも関わらず、一生懸命聞いてくれました。
国会対策委員会とか、国対政治とか、ふつうに生活している限り、
接点がなくて、よくわからない言葉だと思います。
私も自分が国会議員になるまでよく知りませんでした。
しかし、「国対政治」という言葉が存在するくらいで、
国会対策委員会というのは、非常に重要な役割を果たしています。
重要な役割を果たしているものの、不透明さがつきまとい
いわゆる「国対政治」というときには、良いイメージはありません。
自民党と社会党の55年体制の全盛期のころには、
与野党の国対委員長や国対幹部が、水面下で調整しては、
密室談合的に国会運営を決めてきた歴史がありました。
ここ数年は昔ながらの国対政治もだいぶ変わってきていると思います。
過去のことは知りませんが、少なくとも私が国対委員長になってからは、
かつてのように国対が絶大な権力を握る、といった雰囲気でもありません。
今でも国対を中心とした与野党の調整メカニズムには、
不透明なところがあるし、外から見てわかりにくいのは事実です。
不透明なところをなくし、密室談合的な決め方を改めていくのが、
これからの重要な課題だと思います。
特に衆議院と参議院がねじれた今のような状況下では、
必然的に国会対策委員会の役割は重要になってきます。
国対のあり方も含め、国会改革を進めながら、衆参ねじれの国会を
与野党で協力して運営していく体制づくりが重要です。
超党派で国会改革に取り組んでいきたいと思います。
ご参考までの講義メモを下に転載します。
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政治権力論:「国会対策委員会」とは何か
1.国会対策委員会とは?
1)定義:政党が勝手につくったインフォーマルな調整機関(法律の規定なし)
2)機能:国会審議の根回し、「表ではできない」話し合いの場
⇒「表ではできない」理由:①議院運営委員会の機能不全、②微調整(かけ引き)
3)いわゆる「議運・国対」族議員:“党人派”の仕事、政策より根回し、役所に強い
2.国対委員長の日常業務
国会待機:とりあえず国会にいつもいて不測の事態に備える
国対委員長会談(与党、野党、与野党)
幹事長会談および幹事長・国対委員長会談(例:自民、公明、みんなの3幹3国)
他党との連絡調整の窓口、衆議院事務局との連絡調整の窓口
内閣提出法案(閣法):政務調査会と共同で法案への賛否を決定
議員提出法案:自民党は3役、みんなの党は国対委員長のハンコが必要
他党と共同の議員立法法案の提出(自民党とみんなの党で公務員制度改革)
国会同意人事(日銀総裁、人事院総裁等):議運にてヒアリング
議院運営委員会との調整、各委員会の理事や委員との調整
3.「国対政治」の弊害:スケジュール闘争が主戦場
1)与党の“勝ち”:法案を一言一句変えずに、迅速に国会を通過させること。
2)野党の“勝ち”:できるだけ時間を稼ぎ、審議未了廃案に持ち込むこと。
⇒政策論争より日程闘争が中心の国会運営になっているのが現状
4.「国対政治」からの脱却
1)議院運営委員会の理事会協議の実質化
2)少数政党にも議院運営員会理事会での発言権を確保
3)政府(内閣)が国会運営に参加できる体制づくり:三権分立とのバランス
4)国対ベースではない政策協議の仕組みづくり:参院各派協議会、幹事長会談
5)法案や予算案の予備的審議の創設
6)与野党ともに「よい法案を通すこと」が“勝ち”であるべき
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