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民主党代表選:小沢氏主張「一括交付金」 地方、補助金減を懸念

 <分析>

 民主党代表選で、マニフェスト(政権公約)の実現を訴える小沢一郎前幹事長が、財源捻出(ねんしゅつ)をめぐり「補助金を一括交付金化すれば、現在の6、7割に減らせる」と打ち出したことが波紋を広げている。もともと一括交付金化は民主党が政権公約で掲げた方針だが、補助金を減額することについては地方自治体側が強く反発。菅直人首相も補助金で財源を捻出する手法には懐疑的で、代表選の主要な論戦テーマに浮上している。【坂井隆之、久田宏】

 ◇「財源捻出の手段」に反発 7割、削減困難な社会保障

 「私の近しい首長に聞くと、本当に自由に使えるなら今の補助金総額の5割で十分やっていけるという話がある。補助金を全部自主財源として地方に交付するだけでも、かなり多くの財源が見込める」。小沢氏は菅首相との共同会見などで、再三にわたってこう主張し、独自の財源論を展開している。

 小沢氏は、補助金を支出するにあたって国が定める基準が地方の実情に合わず、過剰な設備や社会保障サービスが行われていると主張、一括交付金で地方の自主性に任せれば国の支出を大幅に減らせると説く。また、「中央がやれば大手企業が全部受注して、地方にはお金が回らない。(地方が自主的に行えば)表面上は金額が減るが、地方に回るお金は増える」とも主張。地方分権推進と、マニフェストの財源確保、地域振興が同時に実現するという算段だ。

 これに対して、菅首相は、「補助金をやめて交付金にしても、額そのものを2~3割削るのはなかなか難しい」と小沢氏の主張に反論する。補助金総額21兆円のうち、約7割を削減が困難な社会保障費が占めるためで、「一括交付金化しても地方の自由裁量の拡大につながらない」との見方は、地方にも根強い。

 さらに、小沢氏が主張する交付金化による財源確保は、地方の財源縮小にもつながりかねないことから、地方自治体側からは懸念や批判の声が相次いでいる。麻生渡全国知事会長(福岡県知事)は6日、東京都内で記者会見し、「そもそも(補助金を)地方の創意工夫に基づいたものにするという話だった。いつのまにか財源捻出論になっている」と、小沢氏の補助金削減論をけん制した。

 知事会や市町村会は従来から、地方の自主財源を増やすよう求めている。警戒しているのは小泉純一郎内閣の下で行われた「三位一体の改革」の再現だ。「地方自治体の財政基盤と自立性を強化する」とうたったものの、04~06年度で補助金削減額が4・7兆円にのぼったのに対し、税源移譲は3兆円にとどまった。民主党の一括交付金化の議論に対しても、当初から「国の一方的な財源捻出の手段とすることがあってはならない」として、総額削減をけん制してきた。

 ◇「権限縮小につながる」 各省庁も必死の抵抗

 ひも付き補助金の一括交付金化は本来、民主党が昨年の衆院選マニフェストで打ち出した政策だ。昨年12月には、当時の鳩山由紀夫首相を議長に地域主権戦略会議を設置。関係閣僚のほか、橋下徹・大阪府知事ら地方の代表も加わって一括交付金化などを議論し、今年6月に「11年度予算から一括交付金化を段階的に実施する」との方針を盛り込んだ大綱をまとめている。

 しかし、補助金の廃止が権限の縮小につながるとの危機感を抱く各省庁は、一括交付金に対し強い反発姿勢を示した。同会議が実施したヒアリングでは、「国が政策の必要性を認めて交付するので、使途に全く制約がないことはありえない」(国土交通省)、「保育や介護は国を挙げて取り組むべき重要施策で、国が主体的に取り組む必要がある」(厚生労働省)などの声が続出した。

 地域主権戦略大綱の策定では、国の関与を抑えるために試案の段階で盛り込まれていた「一括交付金は地域が自己決定できる財源」との文言が、最終的に削除されるなど骨抜き化も目立った。メンバーの神野直彦東大名誉教授は「国交省が反対して削除された」ことを明かす。

 戦略会議では今後、一括交付金の対象となる補助金や、交付金の配分などの議論を進める方針だが、各省庁が激しい抵抗を続けることも予想される。これに対し、小沢氏は「民主党が国民の期待を担って誕生した以上、どんなに官僚の抵抗が強かろうが約束を実行するために政策を断行しないといけない。私はやることに自信を持っている」と、強い態度で臨む姿勢を示している。

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 ■ことば

 ◇一括交付金

 国が地方自治体に使途を特定して支出する補助金や負担金(ひも付き補助金)を、基本的に地方が自由に使えるお金として一括交付すること。民主党は09年衆院選のマニフェスト(政権公約)で、ひも付き補助金の一括交付金化を明記。地方の実情に応じて効率的に財源が活用できるほか、補助金申請にかかわる経費や人件費が削減できるとしている。

毎日新聞 2010年9月7日 東京朝刊

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