県は、医師不足を原因とした診療制限の有無(6月末現在)について、県内の全332病院を対象に行った調査の結果を公表した。なんらかの診療制限をしている病院は21・4%にのぼり、昨年度(20・8%)より増加。調査を開始した07年度(18・3%)以来、悪化の一途をたどっている。医師不足の影響は、従来から指摘されているへき地や産婦人科、小児科から、都市部や他の診療科へと拡大していることも分かった。
調査は、県病院協会の協力を得て実施。1次医療(通院医療)から2次医療(入院医療)までを提供し、一般・療養の病床の整備を行うため、地域単位で設定した区域「2次医療圏」別にまとめた。
診療制限をしている病院の割合を2次医療圏別にみると、20%を超えたのは11医療圏のうち6医療圏。最も高かったのは、尾張西部と知多半島の30%だった。名古屋では07年度の14・7%から今年度は21・2%に増えている。
「診療科の全面休止」「入院診療の休止」「分べん対応の休止」「時間外救急患者受け入れ制限」という特に影響が大きい四つの診療制限を行っているのは、県内全域で40病院にのぼった。
診療科ごとにみると、医療訴訟率の高さや長い拘束時間などで医師数の減少が問題となっている産婦人科での診療制限が21・7%と最も高い。女性医師の比率が高く、出産や子育てなどで医療現場から離れる医師が多いなどの理由で医師不足が問題になっている小児科も13・5%と多い。内科や外科でも拡大している。
県は「医師不足は、へき地医療や産婦人科、小児科だけの問題ではなくなっている」と指摘。ドクターバンク制度や医学生に対する奨学金制度の拡充、勤務医の処遇改善などを引き続き実施しているほか、医学系の県内4大学と連携し、医師派遣システムの構築などに向けた協議をスタートさせている。
04年度から新人医師の臨床研修が始まって研修先を自由に選べるようになったため、地方を中心に大学病院で研修する医師が減少した。このため県は、県全体の状況を把握しようと、07年度から毎年、調査を行っている。【荒川基従】
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<地区別の診療制限病院>
2次医療圏 病院数 制限病院数 制限割合(%)
10年度 07年度
名古屋 132 28 21.2 14.7
海部 11 2 18.2 18.2
尾張中部 5 0 0 0
尾張東部 19 2 10.5 10.5
尾張西部 20 6 30.0 30.0
尾張北部 24 6 25.0 24.0
知多半島 20 6 30.0 20.0
西三河北部 19 4 21.1 15.0
西三河南部 38 6 15.8 21.1
東三河北部 6 1 16.7 16.7
東三河南部 38 10 26.3 26.3
計 332 71 21.4 18.3
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<診療科別にみた診療制限をしている病院>
診療科 病院数 制限病院数 診療制限割合(%)
10年度 07年度
産婦人科 69 15 21.7 26.4
小児科 133 18 13.5 8.3
精神科 102 13 12.7 8.3
内科 287 33 11.5 8.1
整形外科 205 18 8.8 4.3
外科 197 9 4.6 1.9
麻酔科 107 4 3.7 2.7
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<特に影響が大きい診療制限を行っている病院>
内訳
2次医療圏 病院数 診療科の全面休止 入院診療の休止 分べん対応の休止 時間外救急受け入れ制限
名古屋 17 5 6 2 8
海部 1 0 1 1 0
尾張中部 0 0 0 0 0
尾張東部 1 0 0 1 0
尾張西部 3 3 1 1 1
尾張北部 3 1 1 1 2
知多半島 4 0 2 1 3
西三河北部 0 0 0 0 0
西三河南部 4 1 2 0 2
東三河北部 1 1 1 1 1
東三河南部 6 4 1 1 2
計 40 15 15 9 19
※重複がある場合は病院数と、内訳の計は一致しない。
毎日新聞 2010年9月7日 地方版