ソーシャルメディアの企業活用で重要なのは、ミニブログ「ツイッター」やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をただ使うだけでなく、自社の店舗や企業サイトと組み合わせて展開することだ。両者がうまく連携すればPRやイベントの効果がより高まる。ただ、こうした手法には大きな落とし穴もある。ソーシャルメディアを見て来店した顧客への対応に問題などがあった場合、ネット上で反響が増幅されて逆にユーザーの信頼を失いかねない危険もあるからだ。
「メディア」というと最新のインターネットサービスばかりに目が行きがちだが、メディアの本来の役割は双方の間を取り持つ「媒介」である。店舗や自社ウェブサイトもユーザーと企業を結ぶ重要なメディアの1つである。
店舗がトラブルの元凶になった米企業の教訓

米スターバックスに関係するつぶやきが並ぶツイッターの画面
店舗が重要なメディアであることを理解するうえで、他山の石となるのが世界最大のコーヒー店チェーン、米スターバックスの事例だ。スターバックスはツイッターで100万のフォロワーを持ち、米SNS「フェースブック」にも1200万人の「ファン」がいるなど、ソーシャルメディア活用の先進企業として知られる。しかし、そんな同社も店舗での対応が問題になってユーザーから立て続けに非難を浴びてしまった。
一つは、利用者の位置情報を利用する米ソーシャルメディア「フォースクエア」を使ったキャンペーンの失敗。もう一つは、従業員の対応がきっかけとなったもので、ネット上の写真共有サイト「フリッカー」では同社を非難する声で「炎上」する騒ぎが起きた。
フォースクエアは、ユーザーが「今どこにいるのか」をネット上に情報発信できるサービスで、米国で人気が急上昇している。GPS(全地球測位システム)機能を搭載した「iPhone(アイフォーン)」のようなスマートフォンを使ってユーザーが店舗などの施設に「チェックイン」すると、それが友人に伝わったり仲間が集まったりして集客効果が期待できる。スターバックスはフォースクエアと組んでクーポン券を発行するキャンペーンを実施したが、「店舗でクーポン券が使えない」というトラブルが発生。ユーザーの期待を裏切る結果となった。
米スターバックスが認定した「フリッカー」上の「公式グループ」の掲示板。今年1月から更新されていない
一方、フリッカーでの炎上は、「店舗で写真を撮影したら店員から怒られた」との投稿がきっかけだった。フリッカーには様々な写真がアップされ、写真のテーマごとにユーザーが「グループ」を作って楽しんでいる。この投稿が寄せられたのはスターバックスが認定した「公式グループ」の掲示板で、あるユーザーからの電話での問い合わせにスターバックスが「店舗内の撮影は許可していない」と回答したことでさらに批判が増えた。以来、掲示板の更新は半年以上もストップしたままだ。
従業員は担当者の都合で動いてくれない
どちらのケースも、スターバックスのソーシャルメディア担当者には予想外だったかもしれない。担当者はインターネットばかり見てしまうが、ユーザーはそうではない。キャンペーンを展開するうえで技術的な課題を克服したつもりでも、店舗というリアルなメディアでつまずく恐れがある。
こうしたトラブルは日本企業にとっても決して対岸の火事ではない。担当者はキャンペーン前に自社の従業員がどれくらいソーシャルメディアを理解しているか、キャンペーンに協力してくれそうかを調査しておく必要がある。同時に、ソーシャルメディアのユーザー行動も確認しておきたい。従業員は貴重な「メディア」であるが、担当者の都合で動いてくれるわけではない。普段の業務にクーポンやプレゼントの対応が加わった場合でも、店舗のオペレーションはスムーズにいくか。支障があれば、どう取り除くかも考えておくべきだ。
SNS、ツイッター、スターバックス、フォースクエア、フェースブック、グリコ乳業、ドロリッチ、ブログ、ソーシャルメディアの歩き方
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