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アニメ界の生き字引・大塚康生氏の貴重なお話が頻出した『大塚康生×上田文人対談』

nikkei TRENDYnet 9月6日(月)11時35分配信

アニメ界の生き字引・大塚康生氏の貴重なお話が頻出した『大塚康生×上田文人対談』
テレビアニメーション界の大御所、大塚康生氏を迎えて行われた特別招待セッション「大塚康生×上田文人対談 〜もっと上手くなりたい! 動かす力〜」。対談相手に『ICO』や『ワンダと巨像』などでゲームデザイン・ディレクターを務めた上田文人氏、進行役...
 テレビアニメーション界の大御所、大塚康生氏を迎えて行われた特別招待セッション「大塚康生×上田文人対談 〜もっと上手くなりたい! 動かす力〜」。対談相手に『ICO』や『ワンダと巨像』などでゲームデザイン・ディレクターを務めた上田文人氏、進行役にバンダイナムコゲームスの細田伸明氏が登壇し、パネルディスカッションが行われた。

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 対談の切り口は、セッション名にもある「もっと上手くなりたい!」。長年アニメ業界の第一線で活躍してきた大塚氏と、『ICO』や『ワンダと巨像』でさまざまなムービーを作り出した上田氏から、もっとうまくアニメーションを作るために必要な要素が語られた。

 大塚氏が語ったのは、作動原理を考えたキャラクターデザインをする、ということ。ただ棒立ちのキャラクターを描くのではなく、そのキャラクターの性格に合ったポーズをさせつつデザイン画を描く。こうすることでアニメーターにも性格が伝わり、より生き生きとしたキャラクターになるという。

 また、キャラクターをアニメーションさせるには、360°全方位から見た絵が必要だとも述べる。マンガ原作の場合、漫画家はキャラクターを後ろから見ることを想定しておらず、後頭部などを大塚氏が代わりに描いたという。

 上田氏が語ったのは、動きのわかりやすいプロポーションのキャラクターデザイン。あらかじめこうデザインしておくことでアニメーションしやすくなる。また、現実に比べて動きの情報量が少なくなるため、実際は動かないような部分もわざと動かすことで情報量を増やし、リアルに近づけるといったテクニックも述べられた。

 ここで上田氏は、『ICO』、『ワンダと巨像』、『人喰いの大鷲トリコ』のムービーを披露。馬の動きにしても、本当は動かない部分を動かしていると解説した。

 ムービーを視聴した大塚氏は、非常によく動くアニメーションに感心していた様子。逆にすごく動くのが不安になってくるといい、米国で止め絵のあるアニメを放映した際のエピソードを語った。米国人は絵が動き続けていないと気になるらしく、止め絵のシーンで「映写機の故障か?」と多くの人が映画館の後方を確認したそうだ。その点日本人は絵が止まっていてもそれを受け入れてくれると述べる。

 また、『鉄腕アトム』のアニメを制作していたとき、アトムが重たいものを軽々と投げるのはおかしいと手塚治虫に文句を言ったというエピソードも語られた。これに対する返答は、「アトムは10万馬力だから」。大塚氏は重たい物は一生懸命持ち上げるという動きを加えないとおかしいと、手塚治虫と議論したという。

 上田氏も大塚氏の意見に同意し、空想するのは簡単だけど、それに説得力を持たせるのがアニメーションの仕事だと語った。

 さらに大塚氏は、優秀なアニメーターは子供のころから優秀だったと断言する。アニメーターを育てるというより発掘する。この仕事にチャレンジするのはいいが、早いうちから始めないと厳しい、とも述べた。

 長年アニメ業界で活躍し続けてきた大塚氏の貴重な経験や知識が、惜しげもなく披露された本セッション。最後にわずかな時間ながら質疑応答が行われ、講演が締めくくられた。

(文/小川幸秀)


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最終更新:9月6日(月)11時35分

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