2010-02-24
■で、実際に海外で働くとどうなるか
この人のブログはいつも読んでいて心配になるんだけど、ファンタジーとしてはアリか、とも思うが、エガちゃんとやらも極端とはいえボロクソに言われっぱなしなのは可哀想なので実際に海外で働いた経験を言うよ。僕の場合、海外といってもアメリカ合衆国のケースだけど
・20代のうちにアメリカできちんと働くには理系四大卒が必須。中退だとビザすらもらえない。
アメリカは失業者対策として労働者人口を著しく制限している。
その結果、いわゆる「サラリーマンのような仕事(寿司職人とか俳優とか特殊なものでない仕事)」に就こうと思ったらビザかグリーンカードが必須。
僕は電通大中退なので、当然これにひっかかってビザを申請するまで非常に大変だった。
これにかかる弁護士費用は軽く100万円を超え、それでもビザが通るかどうかわからなかった。
東大教授と業界の有識者の「本人に十分な学識あり」という英文の推薦状をもらい、僕が掲載された新聞記事や雑誌記事を翻訳付きで作成したりするなど大変な苦労があった。それでも通るかどうかは五分五分と言われていた。
つまり生半可な気持ちでは、海外への転職はできない。
しかも当時は理系に限られていた(今は知らない)。
これはアメリカ人にはない専門知識を有した特殊な技術者でなければビザが降りないということ。
でもアメリカなんかまだマシだよね。英語はみんな中学から習ってるから解るもん。これが英語じゃなくてハングルやポルトガル語だったらもうお手上げだよ。
・ボスの気分を損ねたらその瞬間にクビ
日本では即日解雇は違法行為だが、アメリカでは合法。よほどのことがない限り、解雇に正当な理由は必要ない。
レイオフ(一時解雇)という事実上の三行半で、やっと職にありつけてもすぐに解雇される可能性がある。
スティーブ・ジョブズと同じエレベーターに乗ると、降りる頃にはクビになってるという話は冗談ではない。
そのうえ、移民局と煩雑な手続きが必要な外国人(日本人)を、わざわざ雇おうとする会社も非常に限られている。
そうした背景もあって、アメリカの主要都市では失業者が町に溢れ、車を信号待ちしているだけで「花を買ってくれ」とか「金をくれ」とかいう物乞いや、「仕事が欲しい」というカードを掲げた浮浪者はもはや珍しいものではなくなっている。
・賄賂のやりとりは当たり前。仕事が欲しければメリットをよこしな
一部の大企業では取引をするに当たって担当者に賄賂を送ることが通例化していることがある。
日本ではいまどきその手のリベートを要求されることは滅多に無い。
アメリカでは日本式の「接待」という概念がないため、一緒におねえさんの居る店で飲んで盛り上がってよくわかんないけど相手と仲良くなっちゃった、ということは全く無く、もっとストレートに「賄賂を寄越せ」と言われる場合もある。
アメリカを含む海外における賄賂の重要性は日本の比ではない。日本ではサラリーマンや公務員がかなり品行方正なので賄賂を要求する発想そのものが欠落していることが多いが、海外ではごく普通に行われる。予算には予め賄賂を見込んでおかなければならない場合もある。
もちろん賄賂は違法なので、そもそも違法行為に加担したがらない日本企業はなかなか打って出ていけない。日本の大企業が海外に兆単位の投資をしながらも無惨な敗北を喫したのはこの潔癖さが原因とする人も居る。
日本人にとって違法行為に加担することそのものが大きなストレス負担になる。
・お前の代わりはいくらでもいる
僕の場合、給料は年棒制だった。僕は十分な給料を得ていたから給料に不満はなかったけど、他の人は例えば給料が10年間変わっていないなんていうこともあった。
人間は仕事に習熟すればそれだけ業務効率がアップするわけで、同じ給料なんておかしい、と思ったのだが、同じ仕事をし続けている限りは同じ給料であり、日本のように下積みを重ねてキャリアアップすることは最初から想定されていない。
そんなふうだから、仕事を部下に教えて育てようとか、一緒に頭を使ってなにかを考え出そうとかいう発想に乏しく、社員の忠誠心たるやほんとうに低かった。
例えばあるWebサービスを運営しているベンチャー企業の社員は誰一人として自社のサービスを日常生活で使用していなかった。
「なぜだ?」と聞くと「それが問題なんだ。誰一人としてうちの会社のサービスを好きじゃないんだよ」という返事が帰って来た。
そんな会社で本当に前向きな仕事ができるだろうか。
同じ時期、僕は日本で前に働いていたときの部下からこんな話を聞いた。
「今年、昇給しなかったの。だからもう会社辞めようと思って」
「なんで?」
「給料に不満はないの。けど、昇給しなかったことが不満なの。とても頑張って去年の二倍以上のパフォーマンスで働いたのにそのがんばりはぜんぶ帳消しって言われたような気がして」
価値観が大きく違うと思った。
アメリカ人が昇給しなかったから会社を辞める、なんて言い出すことは考えられない。
もしそういうことがあるとすれば、よほど大きなインパクトのある仕事、それこそ会社が大きく方向転換するような仕事を成し遂げたときだけだ。
僕は結局、ビザも含めていろいろな事情で日本に帰って来た。
アメリカに捲土重来を果たしたい気持ちはいまも持っているけど、勤務形態についてアメリカ型が良いとは必ずしも思っていない。
これは文化の違いなので一概にどちらが良いとも悪いとも言えないが、僕は海外の方が無条件に良いとは言えないんじゃないかと思った。
ただ、死ぬ気で働いたら本当に死ぬので、死ぬ気で働くのはダメだと思う。それが日本人のダメなところだ。
たぶんアメリカ人は軍人すら死ぬ気では働いていない。勝つ気で働いている。
"がんばり"が給与に直結する、会社という閉じられたコミュニティのなかの評価に直結するという脅迫的な観念が"死ぬ気で努力"を引き出しているのだと思うけど、その解釈は危険だし間違っている。
頑張っても結果が伴わなければ評価されないのは日本でも海外でも同じ。
日本の場合、頑張らなくて結果を出した時の評価が低くなりがち、というのがおそらくこの「社畜問題」の根っこだろう。
でも頑張らなくても結果を出せるような人なんて人口の1%未満だから大多数の人は日本で働いて大丈夫だし、頑張ってるフリくらいはしてもいいと思う。受験勉強のときに散々やったしね。
ただ、あまりにアッパーなテンションが続きすぎるような会社なら、とりあえず転職を考えてみるのもいいんじゃないかと。
世の中、そんなに獰猛な会社ばっかりじゃないし。
ただ、結果を出してる会社は、けっこう誰かが頑張ってることが多い(ように見える)。
リクルートの社員なんて本当に朝早くから夜遅くまで頑張ってると思うし、僕も正直、傍で見ていて「なにが彼らをここまで働かせるのだろう」と首を傾げるくらい、リクルートの社員は頑張ってる。
僕はそういうのをある種の高校球児みたいなものだと思っていて、彼らはかなり細かく目標設定があったり、モチベーションの維持をしていたりするから、それはそれで青春のひとつのかたちなのかもな、と思ったりする。
ただし、リクルートではそんなに頑張れるのは若い人だけなので、若いうちにどんどん会社をやめるように推奨されるらしい。
僕はサラリーマン時代は頑張った時期もあったけど、全く頑張らなかった時期もあった。
入社後半年くらいは月に1日しか働かなかったし、それから鬼のように忙しい2年があって、そのあとはまたヒマになったから真っ昼間から毎日自動車学校に通って免許をとった。その結果、給料が下がった、なんてことはぜんぜんなく、むしろ上がった。3年で入社時の2倍くらいまで上がったかな。
こういう、メリハリのあるライフスタイルというのがどちらかというと僕好みだったので僕はこの業界に合ってるんだろうと思う。
ただいまは経営者になっちゃったから、僕がサラリーマンの勤務形態になにを言おうとあんまり説得力ないかもしれないけどねえ
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