与謝蕪村「琴棋書画図襖」(6面のうちの4面)
江戸時代中期の俳人で、画家としても知られる与謝蕪村(1716〜83)が描いた6面の襖(ふすま)絵が見つかった。初期の大作絵画で、これまで知られておらず、8月20日発行の美術誌「国華」1378号(国華社刊)で発表される。同誌編集委員の小林忠・学習院大教授は「文人画家として本格的な歩みを始めたころの記念碑的な作品」と話す。
発見された「琴棋書画図襖(きんきしょがずふすま)」は、1面が縦166センチ、横86〜91センチの大きさ。紙に墨と淡彩で、琴、棋(囲碁)、書画に親しむ文人の理想的な姿が描かれている。美術市場に出てきた際に京都の美術商が購入。今年の春に小林教授が調べたところ、「四明」という署名があることや、当時の蕪村の画風と一致することから、本人の作品と判断した。来歴は不明で、どこの建物に描かれたかは分からないという。
蕪村は池大雅(いけの・たいが)と共に日本独自の文人画を大成したことで知られる。署名から、この絵は40歳前後のころに描かれたとみられる。丹後(京都府北部)の宮津で3年ほど過ごし、絵に本格的に取り組むようになった時期だ。
小林教授は「俳人として既に知られていた蕪村は、丹後時代に画家として大きく成長した。この絵は素直で素朴な描写で、さなぎから蝶(ちょう)になろうとしている蕪村の画風を伝える重要な作品といえる」と話す。(西田健作)