2010年9月7日0時14分
クマの毛皮製のベアスキン帽をかぶってバッキンガム宮殿前を行進する近衛兵=ロンドン、土佐写す
動物愛護団体PETAがつくった、人工皮革の帽子=土佐写す
ステラ・マッカートニーさん
英国のバッキンガム宮殿をさっそうと歩く赤い制服の近衛兵がかぶる、長くて黒いふさふさとした帽子は、野生のクマの毛皮で作られている。そこへ動物愛護団体がかみついた。人工皮革の帽子を開発し、英国防省に交換を求めている。しかし、伝統を重んじる国防省側の反応は鈍い。
ロンドンのバッキンガム宮殿前。赤い制服にのっぽな帽子をかぶった兵隊が行進してくると、観光客がいっせいにカメラを向けた。ロンドンの観光名物の衛兵交代だ。
この帽子は「ベアスキン帽」と呼ばれる。1815年のワーテルローの戦いで、英軍がナポレオン率いる仏軍をやぶったのを記念し、それまで仏軍がかぶっていた帽子を英軍がかぶり始めたのが起源とされる。背を高く見せる効果があるが、現代では一部の近衛兵がかぶるのみだ。
それがカナダの野生グマの毛皮で作られていることは、あまり知られていない。北米にいるアメリカグマなどの毛皮を黒く染めて使う。国防省は約2500個持っている。
動物愛護団体「PETA」のミミ・ベクシー部長によると、クマの背中の部分を使うため、1頭で一つしか作れない。雌グマの毛皮がより適しているせいで、母親グマが殺され、子グマが飢え死にした事例もあるという。
ベクシー部長は「動物愛護に先進的な英国なのに、英国の象徴の一つとされる近衛兵の帽子が、クマを犠牲にするのはおかしい」と話す。
PETAは2002年、毛皮の使用をやめるキャンペーンを開始。元ビートルズのポール・マッカートニーさんの娘で、人気デザイナーのステラ・マッカートニーさんと協力し、人工の皮革を使った代用品づくりに取り組んだ。
05年に作った試作品では、国防省が定める耐水性基準に不合格。しかし、昨年、新たに人工繊維「ベア28」を使った試作品を作り、耐水性の基準をクリアした。