「今回の戦争において、最も欠乏したる一は、人間であった」
1945年(昭和20年)正月の毎日新聞に国民の厭戦(えんせん)気分を嘆く徳富蘇峰の記事が掲載された。
1938年、75歳の蘇峰=徳富蘇峰記念館提供
「この上はいずれ遠からず帝都の真ん中に敵の爆弾が落下するであろうから、その時を待つのほかあるまい」「これを一大転機として、我が一億皇民の心構えを一回転せずんば、まさにいずれの時を期すべきぞ」
国民の気持ちを引き締めるには東京に爆弾が落とされた方がいいというのだ。
「恥知らず」痛罵
評論家の清沢洌は蘇峰の言説に対して「かくのごとき無責任な言があろうか。徳富は戦争開始の責任者でありながら、その罪を国民にきせている」(「暗黒日記」)と批判。「膨張主義」「大日本主義」を鼓吹し、戦争を全面肯定する蘇峰に対し、清沢は日記で「徳富が戦争最大の責任者」「この恥知らずのお太鼓記者」「戦争放火者」と痛罵(つうば)した。
蘇峰に詳しい大阪大学教授(日本政治思想史)の米原謙さん(61)は「言論界の第一人者として、国民の不満や望んでいることを言葉にし、さらに数歩先を表現するのが蘇峰の役割だった」と分析する。自由主義者から見れば許しがたい言動だが、この時代の大多数の日本人の心情を代表していたのが蘇峰だという。
蘇峰は反欧米意識のもと「白閥打破」を唱え、日本人の自尊心に敏感だった。一方で、日本の朝鮮、台湾支配を当然とした。長年蘇峰の資料整理にたずさわってきた徳富蘇峰記念館(神奈川県二宮町)の職員、和田千枝さん(61)は、蘇峰の膨大な業績を高く評価するものの、「欧米が日本を迫害したとあれほど憤慨していたのに、アジアの人々の気持ちが理解できなかったのが残念」と話す。
徳富蘇峰、戦争
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