揺れる自己認識
敗戦後、蘇峰は自ら「百敗院泡沫頑蘇居士」と戒名を定め、謹慎生活を送った。戦後数年間の日記には「予は日本人を買いかぶっていた」と八つ当たりともいえる日本人批判をつづっているが、述べられている日本人論、形式教育批判はリベラリストの清沢らが指摘したものと似通っている。
「日本の教育は、ついに日本をして亡国たらしめた」「各方面に配置されたる人間は、植木屋がはさみで切ってそろえたような人間、活版屋が活字で印刷したような人間、ところてん屋が機械で押し出したような人間」
「およそ日本の文化なるものは、大和民族が自ら創造したるものというべきものは、ほとんど見当たらない」「最も大なる欠点は、一貫したる計画の欠乏」
教育の失敗が「村長が務まるほどの者なら総理大臣も務まる」というほどの人材の払底を招き、国を滅ぼしたという。強烈な反欧米意識の半面、蘇峰の日本人批判は自虐的ともいえる。
米原さんは「日本人の国家としての自己認識は他者(欧米)からの評価に依存しており、蘇峰はその日本的なものを体現している」として、蘇峰を近代日本と日本人を理解するために重要な言論人だとみている。
そして「湾岸戦争の時も他国の評価を気にして、『国際貢献』の名のもとに平和主義という自らのアイデンティティーが揺れ動いた。現在も蘇峰の時代とさほど変わっていない」とも言う。
とくとみ・そほう(1863~1957年)本名猪一郎。明治、大正、昭和期を代表する言論人、歴史家。1890年に「国民新聞」を創刊。日清戦争後の三国干渉を機に国家主義の立場を鮮明にするが、日露戦争では講和を支持したため社屋が焼き打ちされる。
太平洋戦争宣戦の詔勅に筆を入れ、戦時中は戦意高揚の言論活動を行う。1943年に文化勲章(戦後に返上)。戦後はA級戦犯容疑者となったが、高齢と病気で訴追されず。晩年は「近世日本国民史」を著す。
=おわり
徳富蘇峰、戦争
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