ここ数年、日常生活のあらゆる局面で「女性専用」「女性優待」の文字を目にする機会が増えている。都市部の通勤電車に導入された女性専用車両がその代表だが、「男性への逆差別」との声も聞かれる。そんななか、今月から沖縄県で路線バスに「女性専用車」が導入された。これが全国に波及すると、バス通勤の男性には大問題だが…。
今月1日から「女性専用バス」の運行を開始した琉球バス(豊見城市)によると、専用バスはラッシュ時間帯の1日1往復で設定。運転士も女性で、内装に花を飾ったり、カーテンをピンク色にする“演出”も施してある。小学6年生以下の男子や、付き添いが必要な女性に同伴する男性は利用可能という。
乗客の反応は上々だが、ただでさえ沖縄は暑いうえ、台風も多い。猛暑や悪天候の中、男だという理由だけで、ようやく到着したバスに乗れないという“不運”も起きるのではないか。だが、琉球バスの西里憲仁・広報係長はこう語る。
「会社の新体制4周年を記念し、新サービスの一環として始めました。通常ダイヤの車両に併走する形で女性専用バスを走らせますので、男性のお客さまだけがバス停に取り残されることはまずありません」
現在、女性専用車両の乗客は20人程度。1車両の座席数は28席というから、かなりの余裕だ。一方、通常ダイヤの車両は男性通勤客を中心にほぼ満員状態という。
実は、路線バスの女性専用車は初めてのことではない。2003年に京都交通、翌年にジェイ・アール北海道バスが導入し、札幌では現在も片道4便が運行されている。
ジェイ・アール北海道バスの山内近・営業課長は「当社も通常ダイヤの車両と併走しており、吹雪の中で男性客がバス停に取り残される事態は起きないよう配慮しています。女性のお客さまの要望を受けて運行を始め、当初はさまざまな意見もありましたが、現在は定着しています」と話す。
沖縄、北海道とも慎重に運用しているようだが、一方を優遇すれば当然、他方から不満が出る。電車の女性専用車両の是非を議論するサイトでは早くも《女性車両だから花を飾り、カーテンをピンクにするのはジェンダー的にどうか》《これはぜひとも、女性専用車両に反対する会の人たちに乗ってほしい》などの意見が出ている。
ここで名前が挙がった「女性専用車両に反対する会」は、その違法性を主張し、女性専用車両に集団で乗り込む直接行動を起こしている全国組織の有志団体。広報担当の山尾崇人さんは、「道路運送法により、路線バスは性差を理由に運送引き受けを拒絶できない。『痴漢の大部分は男性だが、男性の大部分は痴漢ではない』の考えに基づき、何らかの抗議活動を行いたい」と憤る。
これに対し、前出の西里係長は「今後のお客さまの反応次第で、運行を取りやめることもある」と様子見であることを強調。同会メンバーが“強硬乗車”する事態については、「想定していません」と苦笑いしている。