奥州市江刺区の梁川地区で、遊休農地に綿羊を放牧し、雑草を食べさせることで土地の荒廃を防ぐユニークな取り組みが始まった。地元の集落営農組織が、農家の高齢化に伴って増える遊休農地を有効活用する切り札として計画。将来的には羊肉の販売や、動物との触れ合いによる交流人口の増加など、中山間地域の活性化につなげたい考えだ。
梁川地区には約530世帯が暮らし、約9割が農家。60歳以上の高齢者も46%を占める。このため中山間地にある田畑の管理も容易でないのが現状だ。次第に耕作放棄地や遊休農地が増加。雑草が近隣の農地に影響を与えることから、地元が県や岩手江刺農協の協力を得て、綿羊の導入を検討してきた。
綿羊は県の補助を受けた同農協が、北海道羽幌町産の肉用種サフォーク種を購入し、4集落営農組織で構成する梁川地区集落営農組織連絡協議会(平野昌志会長)に貸し出す。綿羊は軽量で農地を傷めず、多種類の草を食べる特性があるので、草刈りの省力化に最適だという。
8月22日には梁川運動公園近くの遊休農地90アールに、雌の綿羊30頭が放牧された。近く雄1頭を入れて繁殖させ、来春には約40頭の子羊が生まれる予定だ。同協議会では貴重な「労働力」として増やしていき、将来的には他地域への派遣や、食用販売も視野に入れる。平野会長は「子どもを招き、綿羊や飼育する農家と交流する機会をつくるなどして、活力ある地域にしたい」と話している。【湯浅聖一】
毎日新聞 2010年9月5日 地方版