プロローグ
A.D.1910 city of New York
何から話せばいいんだろう? もちろんこれは僕の目を通した僕の物語ではあるけれどいざ自分のことを話そうとなるとこれが難しい。それに僕の場合はいささか特殊な部類になるんだから。
……そう言っても僕のことを一番知っているのは僕しかいないんだから、僕が話すしかないんだけど。
「僕じゃなく神様が一番よく知っている」っていう宗教的な答えはなしだ。もし、神様がいるとしたなら今僕がここにいるには何かの間違いに違いない。そう、何かの間違いに……
今から話すことに神様視点とかあれば便利なのに。
それは今から100年後の4月21日に起こった。いや……それは今からちょうど1年前に起こったとも言える。
ここまで言うと勘の良い人は気付く人はいるんじゃないだろうか? そうならありがたい。もっともそんなことがあるはずはないと限りなく正解に近づきながらもその答えを打ち消すことの方が多いかもしれない。
まずは自己紹介からはじめようか。客観的な観点から自分の価値を見出すことは難しい。(前にも言ったっけ?)お陰で幼稚園、小学校、中学校、高校と随分苦労した。みんながスラスラと自己紹介を終えていく中で何時も僕の番になると詰まる。そんな僕からすると、主観的に自分を紹介する行為に一体どんな意味があるのか甚だ疑問である。
御託を並べてもしょうがないな。
僕は、1994年に大阪で生まれた。性別は男。年齢は1歳……じゃなかった、17歳だ。隣の県にあるミッションスクールに通い、成績は控えめに言っても随分良いほうだったように思う。そう。客観的に見て。
特筆すべきことは本と音楽をこよなく愛していたこと。(これだけは自信を持って言える。僕の周りで僕より本を読む人を見たことは無かった)中でも好きな本は「幸運」にも準古典のアメリカ文学でフィッツ・ジェラルドなんかで、音楽の方はというと……ここで述べる意味があまりないな。
両親についても少し話そう。
……これもほとんど語るべきものが思い当たらない。
ただ、ここで断わって行いといけないことは僕がこよなく本や音楽を愛する以上に両親は僕を愛していたということだ。
少し変わった家庭で……あれは何歳だったかな? 多分11や12の頃に10万円をポイと渡されて「後は自分でなんとかしなさい」なんて言われて株なんかを始めたことを良く覚えている。
父さんがバフェット氏やドラッガー氏、その他の高名な経済人・投資家を尊敬していた影響かもしれないし職業的なものが関係していたのかもしれない。何しろ人生の一冊は『マネジメント』と豪語するような人だ。聖書の隣に『マネジメント』が置かれていたのを良く覚えている。そこ僕の本棚なのに……
朝起きて学校に行って、帰ってきて、音楽を聴きながら本をよんだり、休日には映画をみる。何時も寝る前には株価のレートを見たりなんかして必要があれば売買した。こういう生活が寿命が尽きるまで永遠に続くものだと思われた。
だけどそれは唐突に終わりを迎えたんだよな。
つまり死んだのだ。
自殺か他殺なのか、事故死なのか病死なのか、それとも偶然心臓が止まってしまったのかよく覚えていない。確かなのは寿命か尽きて死んだんではないということだ。突発的な死だったように思う。
これで僕の自己紹介はお終い。後にも先にも何も無い。
普通はそうだろう。死ねば終る。そもそも死んだ人間は自己紹介できない。
だけど僕の場合はもう少し続くのだ。不幸が無ければこれからも続く。
僕は1909年アメリカはニューヨーク州ニューヨーク市に生まれた。性別は男。年齢は若干1歳。
ここ1920年代のアメリカでも特筆すべきことがある・ここには僕の愛した本や音楽がない。 しかし幸いにもここは僕が愛した準古典アメリカ文学の舞台である! 何よりフィッツジェラルドが生きているのだ! 他にも多くの歴史的・教科書的人物が生きている。
だけど親父殿……あなたが尊敬していたドラッカー氏はオーストリアで生まれて一年(僕と一緒)だしバフェット氏は生まれていない。何よりあなたが生まれていないとは……残念ですね。
もし日本の親父がこのことを知ったら泣いて悔しがるだろう。その場で死んで俺も行くなんて言い出すかも。
話を戻そう。
僕の父はフランス貴族を先祖に持って(運よくフランス革命を逃れることが出来て渡米したみたい)祖父の代にデラウェア州からニューヨーク州イーストエッグに移り住んできたらしい。
移り住んだと言えば大叔父さんの時代にフランスに帰った者が何人かいるみたいで、今もいくつかの企業の経営とワインを造ったりしているそうだ。(フランス革命によってほとんどの特権を失ったけれど経営をしていく上で元貴族であるということは多少のアドバンテージがある)
父は20歳、母は19歳と、相当に若い家庭で、現在は父が家の当主をしているようだ。
祖父は残念ながら死んでいるそうな。他の親族はバリバリ元気なご様子。
何となく推測できるだろうけど両親も裕福だ。それも相当の。富豪といった方がしっくりくるかもしれない。何せアメリカの火薬・その他の化学製品のほとんどを取り仕切る一族なのだ。そう僕がもう一度生を受けた一族はなんとあのデュポン家だった。
まぁ、こういう一族・家庭にありがちな夫婦間のすれ違いとかそういったものは無く、家庭はほとんど円満に進んでいる。どうしてこんな人間にこんな親を授けてくれるのだろう? と疑問に思うくらいいい人たちである。僕には勿体ない。
うーん、なにか書き漏らしたことでもあるかな? ああそうだ。重要なことを忘れていた。「もう一度生を受けた」っていうところで分かるだろうけど僕は転生者だ。それと僕の名前はアルフレッド・レクター・デュポン・ド・ヌムール。(自己紹介なのに名前を言い忘れてた)
繰り返すが正真正銘の転生者だ。
これらが、僕がこの一年で収集した情報のほとんど全てである。
※実在の団体名とか組織とか人物とは一切関係ないです
(後書き的なもの)
はじめまして。ほとんどはじめて小説を書く作者です。ボーっと『マネジメント』を読んでいたらふと思いついたんで書いてみました。(多分というか絶対『マネジメント』を理解しきれていないです)↑にも書きましたが実在の(以下略)とは一切関係ありませんが、それっぽい人や会社等々がこれから結構出てくるはずです。ちなみにこの小説は虚実織り交ぜたものです。(といっても大きな流れだとかそういうものは変わりません。)
正直いたらないところばかりだと思いますが宜しくお願いします。あ、あとプロローグなんで少し綺麗にまとめてみようと思ったら思いのほか短くなってしまいました。今日中にもう一話くらいはupするかも。
これで最後ですが作者はマネージャーが『マネジメント』とかを読む本は読んだことがありません。